精神医学66巻10号

2024年10月発行

特集 不登校の理解と支援

【家庭・学校・社会との関連】

不登校と家族の状況—子どもが発信するSOSを手がかりとした家族理解

著者： 中地展生¹ 山口祐子¹

所属機関： ¹帝塚山大学心理学部

ページ範囲：P.1248 - P.1254

文献概要

抄録
　文部科学省の分類では，「長期欠席」の中に「不登校」や「病気」「経済的理由」「その他」などが含まれている。近年の複雑化する社会状況などを踏まえて，本稿では「不登校」本来の定義よりもやや広い範囲から「不登校と家族」の状況をまとめた。具体的には，2020〜2024年に発表された「不登校」と「家族」をキーワードとする39の論文から本テーマに沿ったものを10本選んだ。これらの論文を手がかりとして，「家族機能」「家族システム」などの家族療法的な視点からその家族理解について説明を行った。次に，「不適切な養育（マルトリートメント）や貧困」に加えて，これらの問題とも関連が深い「ヤングケアラー」についても取り上げて，同様に解説を加えた。

参考文献

1）文部科学省：令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について．2023　https://www.mext.go.jp/content/20231004-mxt_jidou01-100002753_1.pdf［2024年7月7日閲覧］

2）文部科学省：不登校児童生徒への支援に関する最終報告．2016　https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/08/01/1374856_2.pdf［2024年7月7日閲覧］

3）齋藤万比古：不登校の治療に家族の観点をどう組み込めるか．精神療法 47：755-757, 2021

4）原田直樹，梶原由紀子，田原千晶，他：元不登校児童生徒とその保護者の不登校をめぐる意識差と家族機能についての研究．福岡県立大学看護学研究紀要 19：1-12, 2022

5）赤平幸子：多職種連携のチーム力を活かした不登校の子どもと家族への支援．外来小児科 25：155-157, 2022

6）草田寿子，岡堂哲雄：家族関係査定法．岡堂哲雄（編）：増補新版 心理検査学—臨床心理査定の基本．垣内出版，pp573-581, 1993

7）小柴孝子：不登校発生の背景要因に関する研究—不登校経験者による内省的語りの質的分析．家族心理学研究 31：43-55, 2017

8）石田陽彦：ひきこもり・不登校等の子供・若者とその家族の支援．次世代を見つめて（講演録集）子ども・若者の育成支援に関する講演から，pp49-73, 2022

9）斎藤環：改訂版 社会的ひきこもり．PHP研究所，2020

10）中地展生：不登校・ひきこもりの子どものいる家族への支援．家族心理学年報 41：62-70, 2023

11）中地展生，山口祐子：ひきこもり支援団体における相談者の分析（1）—性別および不登校経験による検討．日本心理臨床学会第41回大会発表論文集，p288, 2022

12）小野善郎：不登校とひきこもりの関連．精神医学 64：1457-1463, 2022

13）菊地祐子：不登校児の現実 虐待・ネグレクト．小児内科 52：798-800, 2020

14）近池操：スクールカウンセリングで不登校生徒への母親面接．HUMANITAS 47：19-35, 2022

15）櫻井裕子，櫻井恵子，生田周二：居場所「ねいらく」における不登校支援の実践報告．次世代教員養成センター研究紀要 6：233-237, 2020

16）川端健司：経済的困難を抱えた不登校の子どもに対する学校の家族支援の在り方．同志社政策科学研究 22：79-90, 2020

17）藤田美枝子，中谷高久，平川悦子，他：A市における学習支援・子ども食堂・居場所に取組む支援団体への実態調査．聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 18：41-52, 2020

18）尾﨑仁，田中究：児童期のマルトリートメントがこころの発達に及ぼす影響．精神科治療学 36：5-10, 2021

19）本田秀夫：特集 マルトリートメントを受けた子どもたちと精神科医療 特集にあたって．精神科治療学 36：3-4, 2021

20）日本総合研究所：ヤングケアラーの実態に関する調査研究．　https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/2021_13332.pdf［2024年7月7日閲覧］

21）松木宏史：「不登校」と生きる—はっきりとはわからない それが辛いのです．国際研究論叢 36：161-171, 2023