icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻11号

2024年11月発行

文献概要

特集 「難治例」の臨床—治療に難渋する時の診断,治療,そして予防

解離症—「難治例」の臨床

著者: 田中究1

所属機関: 1兵庫県立ひょうごこころの医療センター

ページ範囲:P.1427 - P.1433

文献購入ページに移動
抄録
 解離症の難治を定義するのは困難であるが,解離症状の重篤さや遷延性,身体症状や精神症状などの併存症状の重篤性,社会的および職業的影響の深刻さ,治療終結の困難さがそれを示しているのであろう。その難治をもたらしているのは,解離自体の主体の保護作用であり,薬物療法の無効である。また,解離の治療は主体の思考と感情・感覚の分離の解消を目指すが,身体感覚の主体への統合を意図するアプローチは狭義の医学的治療・心理療法にはのりにくいことも1つの要因かもしれない。臨床家にできることは,解離症の背景にある患者の心的ストレスを理解し,その対処を患者が自分のものとするまで丁寧に一緒に考えていくことであろう。

参考文献

1)Freud S:The Unconscious. Hogarth, London, 1915[新宮一成(訳):無意識.フロイト全集14,岩波書店,2010]
2)Janet P:La Médecine Psychologique. Ernest Flammarion, Éditeur Paris, 1923[松本雅彦(訳):心理学的医学.みすず書房,1981]
3)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,5th ed, Text Revision(DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2022[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳),染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他(訳):DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2023]
4)World Health Organization:The ICD-10 Classification of Mental and Behavioral Disorders:Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines. WHO, Geneva, 1992[融道男,中根允文,小見山実,他(監訳):ICD-10 精神および行動の障害—臨床記述と診断ガイドライン,新訂版.医学書院,2005]
5)ピエール・ジャネ(著),松本雅彦(訳):ピエール・ジャネ—解離の病歴.みすず書房,2011
6)Ludwig AM:The psychobiological functions of dissociation. Am J Clin Hypn 26:93-99, 1983[PMID:6678540]
7)Allen JG:Restoring Mentalizing in Attachment Relationship Treating Trauma with Plain Old Therapy, American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2013[JGアレン(著),上地雄一郎,神谷真由美(訳):愛着関係とメンタライジングによるトラウマ治療—素朴で古い治療のすすめ.北大路書房,2017]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら