icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻12号

2024年12月発行

特集 「治療を終える」に向き合う

【総論】

精神療法の「治療を終える」

著者: 池田暁史1

所属機関: 1大正大学心理社会学部臨床心理学科

ページ範囲:P.1523 - P.1527

文献概要

抄録
 精神療法において「治療を終える」とはどういうことかを論じるために,第一水準の精神療法と第二水準の精神療法という区別を導入した。精神分析的精神療法や認知行動療法のような専門的精神療法である第二水準の精神療法には,治療開始時に期限が設定されているものとされていないものがあり,それによって治療の終わり方は相当に異なる。無期限設定の精神療法では,急に治療を終えるのではなく終結期をもつことが患者が別れを乗り越える(喪の仕事)うえで非常に重要となる。保険診療における通院精神療法や入院精神療法に該当する第一水準の精神療法は,本邦では一般に支持的精神療法と呼ばれることが多いが,その終わり方には実にさまざまなパターンがある。患者が勝手に来なくなってしまうという事態が第二水準の精神療法と比べて格段に多くなるが,それでも可能な限り「治療の終わり」を患者と治療者という2人で体験することの意味は大きい。

参考文献

1)藤山直樹:精神科専門医に求められる精神療法.精神神経誌 117:1011-1014, 2015
2)池田暁史:精神療法の意義と役割.日医師会誌 151(特別号2):105-107, 2022
3)Midgley N, Ensink K, Lindqvist K, et al:Mentalization-Based Treatment for Children:A Time-Limited Approach. American Psychological Association, Washington DC, 2017[上地雄一郎,西村馨(監訳),石谷真一,菊池裕義,渡部京太(訳):メンタライジングによる子どもと親への支援—時間制限式MBT-Cのガイド.北大路書房,2021]
4)Freud S:Mourning and melancholia. 1917. The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud XIV. Hogarth Press and the Institute of Psycho-Analysis, London, 1957[十川幸司(訳):喪とメランコリー.メタサイコロジー論.pp131-153,講談社,2018]
5)Gabbard GO:Long-Term Psychodynamic Psychotherapy:A Basic Text. American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2010[狩野力八郎(監訳),池田暁史(訳):精神力動的精神療法—基本テキスト.岩崎学術出版社,2012]
6)Freud S:From History of an Infantile Neurosis. 1918(1914). The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud XVII. Hogarth Press and the Institute of Psycho-Analysis, London, 1955[鈴木菜実子,坂井俊之,西村玲有他(訳):ある幼児期神経症の病歴より.藤山直樹(編監訳),坂井俊之,鈴木菜実子,山崎孝明(編訳):フロイト症例論集2—ラットマンとウルフマン.pp99-236,岩崎学術出版社,2017]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら