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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻12号

2024年12月発行

特集 「治療を終える」に向き合う

【摂食障害】

神経性やせ症における「治療を終える」

著者: 西園マーハ文1

所属機関: 1明治学院大学心理学部

ページ範囲:P.1558 - P.1562

文献概要

抄録
 神経性やせ症は,病状否認などの心理により治療を開始するのが難しい。治療を開始した後も,中断の可能性にはいつも気をつける必要がある。治療のアウトカムを体重のみとする治療では,体重目標を達成した後にはすぐ治療を離れてしまう場合もある。長期経過の研究では,心理的回復は体重増加の後に進むことも示されている。体重増加後の心理面の回復を目指し,治療を終えることを診療の中で話題にし,そのための準備をしていくことが重要である。少なくとも心理教育が十分行われ,再発した場合には気づいて対応できる必要がある。摂食障害は,パーソナルリカバリーや社会的リカバリーが進めば症状の回復も期待できる疾患であるが,そのためには,社会参加を促すことが非常に重要だと言える。

参考文献

1)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2022[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳),染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他(訳):DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2023]
2)西園マーハ文:摂食障害の中長期予後と死亡例.牛島定信,山内俊雄(編):臨床精神医学講座 special issue第4巻.pp265-277,中山書店,2000
3)Strober M, Freeman R, Morrell W:The long-term course of severe anorexia nervosa in adolescents:Survival analysis of recovery, relapse, and outcome predictors over 10-15 years in a prospective study. Int J Eat Disord 22:339-360, 1997[PMID:9356884]
4)Kothari R:Intimate Partner Violence among women with eating disorders during the perinatal period. International J Eat Disord 48:727-735, 2015[PMID:26032597]
5)西園マーハ文:摂食障害とスティグマ,セルフスティグマ.日本社会精神医学誌 32:386-390, 2023
6)西園マーハ文:摂食障害.実感と納得に向けた病気と治療の伝え方.精神医学 63:1691-1696, 2021
7)池淵恵美:私たちの支援は「エビデンスに基づく実践(EBP)とパーソナルリカバリーの時代」にどうあるべきか.精神障害とリハビリテーション 23:174-184, 2019
8)辻大介:若者の親子・友人関係とアイデンティティ—16〜17歳を対象としたアンケート調査の結果から.関西大学社会学部紀要 35:147-159, 2004
9)木谷智子,岡本祐子:自己の多面性とアイデンティティの関連—多元的アイデンティティに注目して.青年心理学研究 29:91-105, 2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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