icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻2号

2024年02月発行

文献概要

特集 うつ病のバイオマーカー開発の試み

特集にあたって フリーアクセス

著者: 栗山健一1

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部

ページ範囲:P.123 - P.123

 うつ病で苦しむ患者は,世界で3億人以上(世界人口の4%超に相当)に上ることが推計されている(Depression and Other Common Mental Disorders:Global Health Estimates. World Health Organization, 2017)。さらに,世界保健機関(WHO)は2030年までに,うつ病が障害調整生存年数で測定した疾病負担の筆頭疾患になると予測している(The global burden of disease:2004 update. WHO, 2004)。うつ病は,気分の落ち込み(抑うつ気分),興味・喜びの喪失とともに,食欲の減退・過多,不眠・過眠,活力の低下などによって特徴づけられ,個人の感情・思考能力に著しい影響を及ぼし,これにより社会的機能も損なわれる。特に,うつ病エピソードが重く,長く続く場合,自殺という不良転帰につながる可能性もある。前述のWHOによる推計の中で,年間約80万人が自殺により死亡しており,これは全死亡の約1.5%に相当する。
 うつ病の診断・重症度・治療反応性は,主に上記の観察・行動的特徴に基づき評価されるが,この評価系は十分機能しているとは言い難い。DSM-5作成のためのフィールド調査においても複数の精神科医師による評価一致率は高いとは言えず,初期診断の遅れや治療効果判断の不正確さをもたらし,うつ病転機の不良につながる可能性が高い。また,患者ニーズから考えると,うつ病の初期診療はプライマリ・ケアで取り扱われることが求められるにもかかわらず,精神科医に依存する傾向が強いことも,上記評価系の限界によるためと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら