icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻3号

2024年03月発行

文献概要

短報

市販の非麻薬性鎮咳薬を過剰摂取後に高所より墜落した統合失調症の一例

著者: 長谷川友宏1 近藤伸介1 森田進1 藤川慎也1 笠井清登1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院精神神経科

ページ範囲:P.334 - P.337

文献購入ページに移動
抄録
 市販の非麻薬性鎮咳薬を過量内服後に墜落外傷を負った40代男性の一例を報告した。患者は10年前から統合失調症と診断されて精神科治療を受けてきたが,数年前よりデキストロメトルファン(DXM)を主成分とする鎮咳薬を過剰摂取するようになってから,他害行為による措置入院を繰り返した。精神科入院当初,受傷時の記憶はなくせん妄を呈して意識清明度は変動したが,疎通性の良好な際にも希死念慮と幻覚妄想を認めた。DXMは市販鎮咳薬の成分であり,近年使用障害が増加しているため,精神疾患にDXM使用障害を併発する重複診断患者も増加すると考えられる。本報告は同様の事例への注意喚起として意義がある。

参考文献

1)Logan BK, Yeakel JK, Goldfogel G, et al:Dextromethorphan abuse leading to assault, suicide, or homicide. J Forensic Sci 57:1388-1394, 2012[PMID:22537430]
2)Schifano F, Chiappini S, Miuli A, et al:Focus on over-the-counter drugs' misuse:A systematic review on antihistamines, cough medicines, and decongestants. Front Psychiatry 12:657397, 2021[PMID:34025478]
3)Boyer EW:Dextromethorphan abuse. Pediatr Emerg Care 20:858-863, 2004[PMID:15572980]
4)Dixon L:Dual diagnosis of substance abuse in schizophrenia:Prevalence and impact on outcomes. Schizophr Res 35:S93-100, 1999[PMID:10190230]
5)Khantzian EJ, Albanese MJ:Understanding Addiction as Self Medication:Finding Hope Behind the Pain, Rowman & Littlefield Publishers, Lanham, 2008[松本俊彦(訳):人はなぜ依存症になるのか—自己治療としてのアディクション,星和書店,pp75-92, 2013]
6)Antoniou T, Juurlink DN:Dextromethorphan abuse. CMAJ 186:E631, 2014[PMID:25135924]
7)松本俊彦,宇佐美貴士,船田大輔,他:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査.令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業「薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究(研究代表者:嶋根卓也)」総括・分担研究報告書,pp41-104, 2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?