icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻5号

2024年05月発行

文献概要

増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法 Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査 統合失調スペクトラム症及び他の精神病症群

統合失調症の認知機能および日常生活技能・社会機能の評価—MCCB,BACS,SCIP,SCoRS,UPSA-B,SLOF,MATRICS-PASS

著者: 長谷川由美1 住吉太幹12

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・予防精神医学研究部 2国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部

ページ範囲:P.526 - P.529

文献購入ページに移動
はじめに
 統合失調症では,記憶,実行機能,語流暢性,注意,処理速度などを測定する神経心理学的検査の成績が,健常者と比べ1〜1.5標準偏差程度低下している1)。これが統合失調症の認知機能障害(cognitive impairment in schizophrenia:CIS)の定義である1, 2)。CISは寛解状態においても残存し,就労や日常生活技能などの機能的転帰を予測する。このことから,CISをターゲットとした薬物療法,心理社会的介入法,低侵襲脳刺激法などの開発が進められているが,現時点では保険収載されている治療法はない3)。以上のような治療法の開発や患者の社会復帰を精緻に行うには,科学的にコンセンサスを得た検査法によるCISの評価が不可欠である。
 米国ではCISの改善に向けた治療法の開発を目指して,国立精神保健研究所(National Institute of Mental Health:NIMH)主導のMeasurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia(MATRICS)Initiativeが発足した4)。MATRICS Initiativeによるプロジェクト開始以降,機能的転帰の各階層,すなわち認知機能,日常生活技能(daily-living skillsまたはfunctional capacity),社会機能(social functionまたはfunctional performance)が1つの連続体として理解されるようになった(図1)5)。このような流れから,認知機能を含む機能的転帰の各階層の評価尺度(測度)が開発され,日本語版の整備および妥当性の検証も行われてきた2, 6, 7)

参考文献

1)倉知正佳:統合失調症と認知機能障害.精神医学 55:615-625, 2013
2)住吉太幹:精神疾患における認知機能障害—機能的転帰との関連.精神科治療学 30:1411-1418, 2015
3)和田歩,末吉一貴,山田理沙,他:統合失調症における認知機能障害の意義と治療の展望.臨床精神医学 52:527-533, 2023
4)Nuechterlein KH, Green MF, Kern RS, et al:The MATRICS Consensus Cognitive Battery, part 1:Test selection, reliability, and validity. Am J Psychiatry 165:203-213, 2008[PMID:18172019]
5)住吉チカ:統合失調症における機能的転帰—MATRICS Consensus Cognitive Batteryとの関連.日神精薬理誌 31:251-257, 2011
6)Sumiyoshi C, Harvey PD, Takaki M, et al:Factors predicting work outcome in Japanese patients with schizophrenia;Role of multiple functioning levels. Schizophr Res Cogn 2:105-112, 2015[PMID:29379760]
7)Sumiyoshi T, Nishida K, Niimura H, et al:Cognitive insight and functional outcome in schizophrenia:A multi-center collaborative study with the specific level of functioning scale-Japanese version. Schizophr Res Cogn 6:9-14, 2016[PMID:28740819]
8)Mueser K, Tarrier N:Handbook of Social Functioning in Schizophrenia. Allyn & Bacon, Boston, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?