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増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法 Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査 統合失調スペクトラム症及び他の精神病症群
統合失調症の認知機能および日常生活技能・社会機能の評価—MCCB,BACS,SCIP,SCoRS,UPSA-B,SLOF,MATRICS-PASS
著者: 長谷川由美1 住吉太幹12
所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・予防精神医学研究部 2国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部
ページ範囲:P.526 - P.529
文献購入ページに移動統合失調症では,記憶,実行機能,語流暢性,注意,処理速度などを測定する神経心理学的検査の成績が,健常者と比べ1〜1.5標準偏差程度低下している1)。これが統合失調症の認知機能障害(cognitive impairment in schizophrenia:CIS)の定義である1, 2)。CISは寛解状態においても残存し,就労や日常生活技能などの機能的転帰を予測する。このことから,CISをターゲットとした薬物療法,心理社会的介入法,低侵襲脳刺激法などの開発が進められているが,現時点では保険収載されている治療法はない3)。以上のような治療法の開発や患者の社会復帰を精緻に行うには,科学的にコンセンサスを得た検査法によるCISの評価が不可欠である。
米国ではCISの改善に向けた治療法の開発を目指して,国立精神保健研究所(National Institute of Mental Health:NIMH)主導のMeasurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia(MATRICS)Initiativeが発足した4)。MATRICS Initiativeによるプロジェクト開始以降,機能的転帰の各階層,すなわち認知機能,日常生活技能(daily-living skillsまたはfunctional capacity),社会機能(social functionまたはfunctional performance)が1つの連続体として理解されるようになった(図1)5)。このような流れから,認知機能を含む機能的転帰の各階層の評価尺度(測度)が開発され,日本語版の整備および妥当性の検証も行われてきた2, 6, 7)。
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