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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻5号

2024年05月発行

文献概要

増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法 Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査 不安症群

パニック症の評価尺度—PDSS,PAS,HARS

著者: 塩入俊樹1

所属機関: 1岐阜大学大学院医学系研究科精神医学分野

ページ範囲:P.547 - P.552

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はじめに
 誰にでも生じる症状である不安は,精神健康調査票(GHQ)などの精神疾患のスクリーニング用の評価尺度や,状態・特性不安検査(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)やZungの自己評価不安尺度(Self-rating Scale for Anxiety:SAS)などの全般的な不安症状の評価尺度など,疾患非特異的な評価尺度が多数存在するが,それらについては他稿に譲る。
 本稿では,パニック症(panic disorder:PD)の診療で役立つと筆者が考える症状評価尺度として,PDに特化したパニック症重症度評価尺度(Panic Disorder Severity Scale:PDSS)1)とパニック発作・広場恐怖評価尺度(Panic and Agoraphobia Scale:PAS)2)を,そして長年使用されてきたハミルトン不安評価尺度(Hamilton Anxiety Rating Scale:HARS)3)については併存症を診るためのツールとして紹介する。そして,それらの使用目的とタイミング,どのように使いこなすかなどについて,大学病院ではなく精神科クリニックでの実臨床に即し,筆者の経験を基に,診療のコツのようなものをお伝えしようと思う(残念ながら,紙幅の都合もあり,実際の評価尺度は省略する)。
 なお,より簡便な評価尺度(たとえば,パニック発作問診票Panic Attack Questionnaire-Ⅳ:PAQ-Ⅳ4)など)もあるのに,どうしてPDSSとPASを選んだかという理由は,両方とも医師用と患者用の2つがあり,それぞれの日本語版での信頼性および妥当性が検証されている1, 2)からである(当然,患者用を使用する)。また,3つとも約15分以内に評価できる点も実臨床的であろう。読者の皆さんの多忙な臨床現場において一助となれば,幸いである。

参考文献

1)片山素久:自己記入式パニック障害重症度評価スケールThe Self-report Version of the Panic Disorder Severity Scale日本語版 その信頼性および妥当性の検討.心身医学 47:331-338, 2007
2)貝谷久宜,石井 華,正木美奈,他:患者用Panic and Agoraphobia Scale日本語版の信頼性および妥当性.不安研究 9:17-32, 2017
3)Hamilton M:The assessment of anxiety states by rating. Br J Med Psychol 32:50-55, 1959[PMID:13638508](日本語訳:慶應義塾大学,長崎大学,北里大学)
4)Norton PJ, Zvolensky MJ, Bonn-Miller MO, et al:Use of the Panic Attack Questionnaire-IV to assess non-clinical panic attacks and limited symptom panic attacks in student and community samples. J Anxiety Disord 22:1159-1171, 2008[PMID:18243647]
5)University of Florida Health:Hamilton Anxiety Rating Scale(HAM-A). https://dcf.psychiatry.ufl.edu/files/2011/05/HAMILTON-ANXIETY.pdf[2023年12月20日閲覧]
6)大坪天平,幸田るみ子,高塩 理,他:日本語版Hamilton Anxiety Rating Scale-Interview Guide(HARS-IG)の信頼性・妥当性の検討.臨床精神薬理 8:1579-1593, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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