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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻5号

2024年05月発行

文献概要

増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法 Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査 不安症群

社交不安症の評価尺度—LSAS,FNE,SADS,SPS,SIAS

著者: 髙塩理12 高橋彩子2 杉田秀太郎2

所属機関: 1昭和大学病院附属東病院精神神経科 2昭和大学医学部精神医学講座

ページ範囲:P.553 - P.558

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社交不安症の病態・概念
 社交不安症(social anxiety disorder:SAD)は,1980年に改訂されたDSM-Ⅲにおいて社会恐怖として登場した。海外において1900年代初頭にはすでに記載があり,日本においても近似する病態として「対人恐怖症」の知見が蓄積されてきた。歴史的に見ても「無視されてきた」一方で,看過できなかった疾患とも言える。米国での有病率は6.8%と報告され,他の不安症や気分障害,物質関連障害など他の精神疾患と併存しやすい。また,治療しないと症状は持続し慢性経過を辿り,学業や仕事や人間関係などに支障を来す。
 やがて疾患啓発が進み,名称は「社会」から「社交」へ,そして「恐怖」から「不安症」へと変更されてきた。その結果,「対人交流場面での単なる過剰に緊張しやすい性格」ではなく,治療可能な疾患として知られるようになり,保険適用のある向精神薬も上市されたことで,SAD患者の生活の質や社会機能は大きく向上した。しかしながら,SAD患者の受診率は低く,患者が受診しても治療者がSADを見過ごしたり,症状を過小評価したりしている可能性がある。取りこぼしなく症状を把握し診断するためにSADを対象にした評価尺度を用いるべきである。

参考文献

1)Liebowitz MR:Social phobia. Mod Probl Pharmacopsychiatry 22:141-173, 1987[PMID:2885745]
2)朝倉聡,井上誠士郎,佐々木史,他:Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)日本語版の信頼性および妥当性の検討.精神医学 44:1077-1084, 2002
3)石川利江,佐々木和義,福井至:社会的不安尺度FNE・SADSの日本語版標準化の試み.行動療法研究 18:10-17, 1992
4)金井嘉宏,笹川智子,陳畯雲,他:Social Phobia ScaleとSocial Interaction Anxiety Scale日本語版の開発.心身医学 44:841-850, 2004
5)笹川智子,金井嘉宏,村中泰子,他:他者からの否定的評価に対する社会的不安尺度(FNE)短縮版作成の試み—項目反応理論による検討.行動療法研究 30:87-98, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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