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文献概要
増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法 Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査 不安症群
社交不安症の評価尺度—LSAS,FNE,SADS,SPS,SIAS
著者: 髙塩理12 高橋彩子2 杉田秀太郎2
所属機関: 1昭和大学病院附属東病院精神神経科 2昭和大学医学部精神医学講座
ページ範囲:P.553 - P.558
文献購入ページに移動社交不安症(social anxiety disorder:SAD)は,1980年に改訂されたDSM-Ⅲにおいて社会恐怖として登場した。海外において1900年代初頭にはすでに記載があり,日本においても近似する病態として「対人恐怖症」の知見が蓄積されてきた。歴史的に見ても「無視されてきた」一方で,看過できなかった疾患とも言える。米国での有病率は6.8%と報告され,他の不安症や気分障害,物質関連障害など他の精神疾患と併存しやすい。また,治療しないと症状は持続し慢性経過を辿り,学業や仕事や人間関係などに支障を来す。
やがて疾患啓発が進み,名称は「社会」から「社交」へ,そして「恐怖」から「不安症」へと変更されてきた。その結果,「対人交流場面での単なる過剰に緊張しやすい性格」ではなく,治療可能な疾患として知られるようになり,保険適用のある向精神薬も上市されたことで,SAD患者の生活の質や社会機能は大きく向上した。しかしながら,SAD患者の受診率は低く,患者が受診しても治療者がSADを見過ごしたり,症状を過小評価したりしている可能性がある。取りこぼしなく症状を把握し診断するためにSADを対象にした評価尺度を用いるべきである。
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