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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻5号

2024年05月発行

増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法

Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査 性機能不全群・性別違和

性別不合/性別違和の評価尺度・検査—UGDS,性別違和感尺度,HTPPテスト

著者: 木下真也1

所属機関: 1大阪医科薬科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.617 - P.620

文献概要

はじめに
 性同一性障害(gender identity disorder)は,ICD-11では性別不合(gender incongruence)に,DSM-5では性別違和(gender dysphoria)に診断名が変更となった。大きな変更点は,ICD-11では精神疾患から外れたこと,DSM-5では「disorder」ではなくなったことであり,これは脱精神病理化を意味する。ただし,性別違和感そのものは病的ではないとはいえ,性別違和感により「生きづらさ」や「身体への嫌悪感」などの苦悩・苦痛が生じるため,ジェンダー外来においては性別違和感を適切に把握して,苦悩・苦痛が少しでも減るように一緒に模索していくことが重要である。
 性別違和感の把握には本人や家族などからの問診が基本となるが,UGDS(The Utrecht Gender Dysphoria Scale)や性別違和感尺度といった評価尺度を用いることは有用である。UGDSは診断補助や治療効果の測定などを目的に世界で使用されており,性別違和感尺度は軽微な性別違和感が評価できることが特徴である。また,性別不合/性別違和の診断には他の精神疾患との鑑別が重要であるため,普段の診療場面で用いる心理検査を行うことが一般的である。本稿では,UGDSや性別違和感尺度などの評価尺度に加え,当科ジェンダー外来でスクリーニング的に行っている心理検査について解説する。

参考文献

1)WHO:International Statistical Classification of Disease and Related Health Problems, 11th Edition. World Health Organization, Geneva, 2018
2)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed(DSM-5). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2013[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014]
3)針間克己:国際診断基準における性別違和・性別不合.精神医学 64:1111-1117, 2022
4)松本洋輔:日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断とガイドライン」について.精神医学 64:1118-1126, 2022
5)Cohen-Kettenis PT, van Goozen SH:Sex reassignment of adolescent transsexuals;A follow-up study. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 36:263-271, 1997[PMID:9031580]
6)浜田恵,伊藤大幸,片桐正敏,他:小中学校における性別違和感と抑うつ・攻撃性の関連.発達心理学研究 27:137-147, 2016
7)石丸径一郎,針間克己:性別違和の強度を評価する自記式質問紙尺度(UGDS)日本語版の信頼性,妥当性,カットオフ値.GID会誌 4:162-163, 2011
8)Jenifer K, Berg D, Catalpa JM, et al:Utrecht Gender Dysphoria Scale-Gender Spectrum(UGDS-GS):Construct validity among transgender, nonbinary, and LGBQ samples. Int J Transgend Health 21:194-208, 2022[PMID:33015669]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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