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増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法 Ⅲ章 臨床場面別の活用法
子どもの診療における評価尺度・検査の活用手順
著者: 今成英司1 東琢磨 小坂浩隆
所属機関: 1福井大学医学部附属病院神経科精神科・子どものこころ診療部
ページ範囲:P.693 - P.697
文献購入ページに移動一般に,年齢にかかわらず精神医学的診療を行う際には,経過や関連する情報を丁寧に収集して患者の状態を把握する必要があるため,外来枠は他科に比してかなり余裕を持った時間設定をされることが多いものの,現状では常に慌ただしく時間に追われることが多い。そして,精神科外来にかかる患者は,受診までに蓄積された自身の辛さや思いが溢れて話が長引くことも多い一方で,重度の不安障害や気分障害などでは,返答潜時が非常に長く質問になかなか答えられず,患者自身の言葉での説明が非常に難しいことが少なくない。やっと話せても迂遠で非常にまとまりがなかったり,精神病圏の病態では妄想的な内容や幻覚の描写が混じることもあり,なかなか病状を捉えづらいことも多い。さらに児童思春期ともなると,そもそも本人の言語能力が未熟でうまく自身の状態を説明できず,緘黙で全く話をしてくれない場合もある。その保護者も不安や徒労感を少なからず持っており,本人の思い以外に保護者のとめどない思いの表出もある。また,学校担任や支援員,児童相談所職員が同伴することもある。そのため,児童思春期の精神科系の外来,特に初診場面では,相当程度時間を要するのが普通で,たとえ長めの診療枠を設定されていたとしても時間は当然切迫する。
その一方で,自閉スペクトラム症(ASD)特性を持った子どもなどでは,予約時間ぴったりに診療が始まらないと癇癪を起こしたり,注意欠如多動症(ADHD)の特性から診察時間までじっと待つことができなかったり,付き添っている保護者がしびれを切らしてしまうこともあり,児童思春期の外来診療は時間との闘いになる。そのため,患児の状態を効率よく把握する工夫が重要で,評価尺度の利用はその一助となる。
検査をこう進めるべき,といった決まった流れのようなものはなく,それぞれの医療者の診療スタイルや経験によっても,どうやって検査を利用するかは異なると思われる。本稿では主に簡易評価尺度の施行を念頭に置き,当院でよく行われている方法を一例として紹介するにとどめ,あくまで参考程度にお読みいただければと思う。
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