文献詳細
増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法
Ⅲ章 臨床場面別の活用法
自動車運転評価における評価尺度・検査の活用手順
著者: 上村直人1 藤戸良子2
所属機関: 1高知大学保健管理センター医学部分室 2高知大学医学部神経精神科学講座
ページ範囲:P.726 - P.731
文献概要
近年,高齢者と自動車運転の問題,特に認知症と自動車運転が社会的にも注目され,さまざまな対策が行われている。臨床医は患者の運転能力の評価では,医学的判断が求められるなど実質,運転能力の評価に関わっている。75歳以上の免許更新者では,認知機能検査において認知症が疑われる第1分類に判定されれば,医師の診断を受けることが義務化され,わが国では認知症と認識されれば,現行法でもすでに自動車運転が禁止されている。しかしながら,高齢者,特に認知症の人と運転免許の対応についてはまだまだ医学的な対応や臨床現場での対応方法に統一されたものはなく,研究面でも十分検討されているとは言い難い。
2022年5月から一定の違反歴がある75歳以上の高齢者に運転技能検査(実車テスト)を義務付けるなど道路交通法が改正され,より運転能力の評価という点では進んだ一方で,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)と呼ばれる認知症の前段階の状態に対する運転能力評価や対策は今回の改正でみられなくなった。したがって,今後は医療現場においては,MCIレベルの段階から運転能力の評価が求められるようになりえる。
そこで本稿では,精神科臨床で求められる高齢者,認知症を主とする自動車運転評価における評価尺度・検査の活用手順について述べる。
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