文献詳細
特集 精神疾患の気づきと病識
文献概要
はじめに
病識は当事者会でも語られるキーワードのひとつである。しかし,その意味は一様ではない。「病識がなかなか持てなくて」と,どこか自省的に語る者もいれば,「医療従事者から“病識欠如”と断じられて実存を脅かされた」と語る者もいる。精神障害のある者にとって最も身近な社会的支援のひとつが精神科医療であるが,病識という言葉の捉え方と同じように,複雑な思いを抱えた者が多いのでないだろうか。その主な理由のひとつには,非自発的医療を制度として内包している精神医療保健福祉体制が構造的な問題をもたらしていると言えるだろう。一方で,非自発的医療を容認するに足る医学的な正当性や社会からの要請が制度として盤石さを与えているとも言えるのではないか。つまり,精神科医療における病識の有無をめぐって臨床で起きている個別具体的な事象のあり方とは別にして,病識という考え方そのものがある意味では制度の根幹になっていることに注目をしたい。本稿では,当事者活動からみた病識をめぐっての具体的な事象と社会的な文脈から考察を試みたい。
病識は当事者会でも語られるキーワードのひとつである。しかし,その意味は一様ではない。「病識がなかなか持てなくて」と,どこか自省的に語る者もいれば,「医療従事者から“病識欠如”と断じられて実存を脅かされた」と語る者もいる。精神障害のある者にとって最も身近な社会的支援のひとつが精神科医療であるが,病識という言葉の捉え方と同じように,複雑な思いを抱えた者が多いのでないだろうか。その主な理由のひとつには,非自発的医療を制度として内包している精神医療保健福祉体制が構造的な問題をもたらしていると言えるだろう。一方で,非自発的医療を容認するに足る医学的な正当性や社会からの要請が制度として盤石さを与えているとも言えるのではないか。つまり,精神科医療における病識の有無をめぐって臨床で起きている個別具体的な事象のあり方とは別にして,病識という考え方そのものがある意味では制度の根幹になっていることに注目をしたい。本稿では,当事者活動からみた病識をめぐっての具体的な事象と社会的な文脈から考察を試みたい。
参考文献
1)厚生労働省:令和4年度障害者総合福祉推進事業「情報通信機器を用いた精神療法を安全・適切に実施するための指針の策定に関する検討」報告書.2023 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001113657.pdf[2024年4月3日閲覧]
2)国際連合 障害者の権利に関する委員会:障害者権利条約に関する日本国の第1回報告に対する最終見解.2022
3)Ruškus J:Review of the report of Japan at the CRPD committee main issues and further effort. 2022
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