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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻6号

2024年06月発行

文献概要

特集 精神疾患の気づきと病識

発達障害の気づきと病識

著者: 村上伸治1

所属機関: 1川崎医科大学精神科学教室

ページ範囲:P.822 - P.827

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抄録
 精神疾患のなかでも発達障害,特に自閉スペクトラム症(ASD)では,精神疾患特有の自己の客観視の困難に,ASD特性の自己の客観視の困難が加重することが病識に大きく影響する。ASDの診断では,これまでの困りごとと特性を1つずつ結び付けて説明し,実感のある診断や病識を目指すことが重要である。神のお告げのような実感のない診断と病識はその後の困難の原因となり,特に,しぶしぶ受診して診断される例で困難は顕著となる。病識を育てようとして障害特性を指摘することは患者を責めることになりやすく慎重を要する。発達障害を診断し病識を求めることは,時にパンドラの箱を開けることになる場合もある。発達障害は定型発達と連続しているが異質でもあり,自文化と対等の異文化として理解し尊重する文脈で病識が機能することが望まれる。

参考文献

1)吉田友子:自閉症スペクトラムを告知するということ.精神経誌 115:616-622, 2013
2)村上伸治:現場から考える精神療法—うつ,統合失調症,そして発達障害.日本評論社,pp 1-220, 2017
3)村上伸治:精神療法からみた「診断とは何か」.こころの科学 234:16-22, 2024
4)村上伸治:大人の発達障害の診断と支援.青木省三,村上伸治(編):大人の発達障害を診るということ—診断や対応に迷う症例から考える.医学書院,pp 1-32, 2015
5)井上真一郎(編著):「大人の発達障害」トリセツのつくりかた.中外医学社,pp 1-149, 2020
6)青木省三:ぼくらの中の発達障害.筑摩書房,pp 1-219, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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