文献詳細
文献概要
特集 精神疾患の気づきと病識
摂食障害の気づきと病識
著者: 西園マーハ文1
所属機関: 1明治学院大学心理学部
ページ範囲:P.836 - P.840
文献購入ページに移動抄録
摂食障害は,病識がない疾患だと考えられがちである。確かに,極度の低体重にあっても体調の悪さを否認するといった現象は広く知られており,これが治療の難しさの大きな要因となることは多い。しかし,摂食障害患者に病感や病識が全くないわけではない。摂食障害の病識に関する研究は,摂食障害の病識は,あるかないかだけでなく,多面的に捉える必要性を示している。摂食障害については,医学的症状の軽快とともに病識が自然に出てくるといった経過は望みにくく,治療初期から,以前からの変化を話題にするなど,病識を育てることそのものを治療のテーマとしていく必要がある。一方,長期化に伴って病識が生まれてくる場合があり,これも見逃さずに,行動変容に結び付けられるような支援が必要である。
摂食障害は,病識がない疾患だと考えられがちである。確かに,極度の低体重にあっても体調の悪さを否認するといった現象は広く知られており,これが治療の難しさの大きな要因となることは多い。しかし,摂食障害患者に病感や病識が全くないわけではない。摂食障害の病識に関する研究は,摂食障害の病識は,あるかないかだけでなく,多面的に捉える必要性を示している。摂食障害については,医学的症状の軽快とともに病識が自然に出てくるといった経過は望みにくく,治療初期から,以前からの変化を話題にするなど,病識を育てることそのものを治療のテーマとしていく必要がある。一方,長期化に伴って病識が生まれてくる場合があり,これも見逃さずに,行動変容に結び付けられるような支援が必要である。
参考文献
1)Gull WW:Anorexia nervosa. Lancet 131:516-517, 1888
2)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision(DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington DC, 2022[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳),染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,他(訳):DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2023]
3)Steinglass JE, Eisen JL, Attla E, et al:Is anorexia nervosa a delusional disorder? An assessment of eating beliefs in anorexia nervosa. J Psychiatr Pract 13:65-71, 2007[PMID:17414681]
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5)Konstantakopoulos G, Tchanturia K, Surguladze SA, et al:Insight in eating disorders:Clinical and cognitive correlates. Psychol Med 41:1951-1961, 2011[PMID:21211101]
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7)西園マーハ文:「実感と納得」に向けた病気と治療の伝え方 摂食障害.精神医学 63:1691-1696, 2021
8)西園マーハ文:摂食障害における病識.精神科治療学 30:1327-1332, 2015
9)Vandereycken W, van Humbeeck I:Denial and concealment of eating disroders:A retrospective survey. Eur Eat Disord Rev 16:109-114, 2008[PMID:18240122]
10)西園マーハ文:摂食障害(摂食症)に対する精神療法のあり方—支持的精神療法は何を支持すべきか.精神医学 65:1245-1251, 2023
11)西園マーハ文:摂食障害における病識と治療.精神神経学雑誌 119:903-910, 2017
12)藤平和吉,田川みなみ,長谷川哲也,他:自己効力感と自尊感情を通じた「生きる力の回復」を神経性やせ症の当事者とともに振り返る.精神科臨床サービス 15:528-535, 2015
13)特定医療法人群馬会群馬病院摂食障害治療チーム:過食症短期入院治療プログラム—精神科のスキルを生かして摂食障害治療に取り組もう.星和書店,pp 56-81, 2017
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