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雑誌目次

雑誌文献

精神医学66巻7号

2024年07月発行

雑誌目次

特集 アディクション—コロナ禍で変わったこと,変わらないこと

特集にあたって

著者: 中尾智博

ページ範囲:P.873 - P.873

 本誌における前回のアディクション特集は,樋口進先生による2018年2月号の企画「多様なアディクションとその対応」であり,約6年前に遡る。その後もアディクションに関しては,精神科医療,そして世間一般においても依然高い興味と関心が寄せられており,ICD-10からICD-11への移行に伴うアディクション概念の変化にも注目が集まっている。さらに,2020年以来長期に及んだ新型コロナウイルス感染症パンデミック(コロナ禍)による生活環境や対人関係の変化,リモートの普及,景気の後退は,さまざまなアディクションを発症するリスクを高めている可能性がある。以前に世界保健機関(WHO)が実施した自殺者の調査では,物質関連障害は気分障害に次いで高頻度でみられたというデータがあり,コロナ禍においてわが国の自殺者減少傾向が下げ止まり上昇に転じた背景には,アルコールの乱用と未治療うつ病患者の潜在的増加が影響している可能性がある。また,大麻を中心とした違法薬物乱用者および市販薬の常用量依存者の増加傾向も憂慮すべき事態である。
 アディクションの概念は,近年の精神医学において急速な拡大をみせているが,それは物質依存以外に,行動嗜癖や関係依存といった多様な概念が含まれるようになった点が大きいだろう。統合型リゾート施設(IR)実施法とともにギャンブル等依存症対策基本法の制定がされたが,パチンコや競馬・競艇といった従来型のギャンブルに加え,スマートフォン(以下,スマホ)などからアクセスするオンライン・カジノの広がりも看過できない。また,インターネット・ゲーム依存やスマホ依存の広がりも然りである。行動嗜癖としては性的アディクションや摂食障害の問題にも注目が集まっている。

【総論】

アディクションの今日的理解—ICD-10からICD-11への変化を中心に

著者: 樋口進

ページ範囲:P.874 - P.881

抄録
 最近,嗜癖分野は大きく変貌した。本稿では主にICD-10からICD-11への変化を中心に概説する。最大の変化は,ギャンブル行動症やゲーム行動症といった嗜癖行動症が新たに嗜癖に加わり,その概念が拡大したことである。物質使用症では,精神作用物質の有害な使用エピソードのような新しいカテゴリーが収載された。また,物質依存の診断項目が6項目から3項目に簡素化された。さらに,ICD-11では,他者への健康面での害やそのリスクも,本人の診断対象となった。一方で,2019年後半から始まったCOVID-19パンデミックは,人々の生活や経済活動などに多大な影響を与えた。嗜癖分野も例外ではなく,特に行動嗜癖への影響は顕著だった。本稿の最後にこの点についても言及する。

アディクションの脳科学

著者: 小林七彩 ,   髙橋英彦

ページ範囲:P.882 - P.888

抄録
 アディクションは,単なる快楽追求や意志の弱さによる行動ではなく,生物学的,心理的,社会的要因が複雑に絡み合う疾患である。本稿では,アディクションの神経基盤に焦点を絞り,反射系と衝動系の障害を中心に概説する。アディクションは,報酬系の過剰活性化と実行的認知システムの弱体化により特徴付けられ,これにより嗜癖行動が維持される。また,アディクションには脳の特定領域の機能障害が関与しており,これには意思決定,記憶,注意制御などが含まれる。さらに,物質依存と行動嗜癖の相違点,アディクションのサブタイプに関するパスウェイモデルの紹介,アディクション治療における認知行動療法や動機付け面接の選択の際に参考となる臨床像と神経基盤について説明する。アディクションの脳科学への理解を深めることにより,患者の言動を理解し,偏見を減らし,適切な治療選択へ役立てられる。

【物質依存】

アルコール依存症の疫学—COVID-19の流行によってアルコール依存症は増えたのか?

著者: 田中増郎 ,   山下理英子

ページ範囲:P.890 - P.895

抄録
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって,精神科医療も大きな影響を受けた。過去の文献やコロナ禍での飲酒量と受診者数の変化に関するデータなどを基に,この流行下でアルコール依存症の増加があったのかについて考察した。過去の自然災害や人的な災害後にアルコール依存症患者の数に増加はみられないとの報告があり,災害の1つと言える今回のCOVID-19流行下でも受診者数の著しい増加は確認できなかった。むしろ,流行初期には,外での飲酒の機会が減ったことで飲酒量が低下したとのデータもある。この結果がアルコール依存症を抱える人の人数の変化と直接関連しているとは明言できないが,アルコール依存症の増加が認められない1つの根拠ではあると言えるかもしれない。一方で,感染症対応を行った医療従事者ではアルコール依存症が増えたという報告があるため,今後は医療従事者が依存症に罹患するリスクへの警戒が必要だろう。

アルコール依存症の病態—COVID-19流行下での変化も含めて

著者: 佐久間寛之

ページ範囲:P.896 - P.901

抄録
 アルコール依存症はコントロール障害を軸とした疾患である。common diseaseであるにもかかわらず,多くの医療者が治療や介入に悩みがちである。依存症の本質は心的苦痛である。飲酒が心的苦痛の原因であると同時に,心的苦痛の自己治療であるというダブルバインドの状態になりがちである。対立的,直面化的な対応は敵対的な治療関係につながりかねない。患者を理解しようという対象理解の視点が必要である。COVID-19流行下(コロナ禍)でさまざまなメンタルヘルスの悪化が指摘されたが,アルコール依存症が増加したという明確なデータはない。しかし災害状況では,断酒したアルコール依存症者など脆弱性を持つ一群の再発が報告されているため注意を要する。また,コロナ禍により依存症の治療環境もオンライン化,グローバル化が進んだ。コロナ禍を経たわれわれは,依存症者が持つ孤独・孤立の苦痛を理解できるはずである。対象理解の視点が重要である。

アルコール依存症の治療

著者: 武藤岳夫 ,   長徹二

ページ範囲:P.902 - P.908

抄録
 アルコール依存症の主な治療要素は,解毒治療,心理社会的治療,薬物療法,自助グループへの橋渡しなどで構成されている。治療の中核とも言える心理社会的治療は,その多くが集団で実施されていたため,コロナ禍による治療への影響は特に大きく,専門医療機関に多くの混乱をもたらした。また,地域の自助グループも,長期にわたり休会するグループが多く,患者もスタッフも回復の大きな柱に接する貴重な機会を奪われた。
 コロナ禍を経験し,オンラインでのミーティングや自助グループなどが普及し,治療構造に大きな変化がもたらされた。また,コロナ禍以前から開発されていたデジタル介入ツールも,ICTの活用が爆発的に普及したことにより,早期介入などへのさらなる活用が期待される。しかし治療の根本は,患者が安心して正直に話せる居場所と治療関係の構築,そしてその場につながり続けることであることに変わりはない。

覚醒剤依存の病態と治療

著者: 小林桜児

ページ範囲:P.910 - P.916

抄録
 2010年代後半から覚醒剤の乱用者は減少傾向にあり,コロナ禍の最中でも乱用者は増加しなかった。覚醒剤依存患者の年齢は徐々に若年層から中高年に移行しつつある。患者の生活背景は,向精神薬や市販薬の依存患者と比較すると,補導歴のある者や貧困,ネグレクト,親との離別体験を経た者が多い。小児期逆境体験の累積は,他者に頼って自らの心理的苦痛に対処する行動パターンの習得を妨げることになり,治療へと動機付けることが困難となりやすい。さらに覚醒剤乱用が長期化すると,精神病症状や抑うつ気分,睡眠障害も併存しやすくなる。回復支援に当たっては,支援者側が焦って断薬治療を強要せず,たとえ遠回りになっても患者本人の選択を尊重するほうがよい。薬物乱用が止まらず,生活上の困り感が高まり,治療を受けることに本人が納得できるようになるまで,見守り続ける姿勢が患者との治療同盟構築に不可欠なのである。

大麻を巡る諸問題と対応

著者: 成瀬暢也

ページ範囲:P.917 - P.923

抄録
 大麻は世界で最も流通している違法薬物であり,「麻薬に関する単一条約」に基づき国際的に規制されている。近年,非犯罪化・合法化する国が登場し,医療用大麻,大麻製剤の認可が広がるなど,世界は規制緩和に動いている。わが国は厳格に規制してきたが,医療への利用の必要性,乱用する若者の急増などから,2023年に大麻取締法が改正された。米国で最初に合法化されたコロラド州では,若年者の経験率,大麻関連の逮捕者数,救急搬送件数,交通事故件数,違法市場数の増加などが報告されている。一方,大麻の健康被害は概して深刻ではないものの,主成分の1つであるTHCは用量依存性に精神病症状を惹起し,統合失調症を発症・増悪させること,使用障害の治療は動機付けが難しいことから注意を要する。大麻製剤は,がんやHIV/AIDS患者の食欲改善,難治性てんかんの治療に認可されている。世界の大麻産業が著しい成長を遂げる状況で,大麻を巡る状況から目が離せない。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の常用量依存とその回避に向けて

著者: 丹野行博 ,   村岡寛之 ,   稲田健

ページ範囲:P.924 - P.929

抄録
 ベンゾジアゼピン受容体作動薬は速やかな抗不安作用,鎮静催眠作用など,臨床上有効な作用を有しており,比較的安全性も高く精神科臨床において用いられる頻度の高い薬剤である。その一方で依存性や離脱症状といった問題を抱えている。依存性,耐性についての理解がベンゾジアゼピン受容体作動薬の問題点の回避に必要である。さらに,ベンゾジアゼピン受容体作動薬の使用開始時に出口戦略を意識すること,すなわち使用開始時から中止についての構想を練っておくことが重要である。本稿ではベンゾジアゼピン受容体作動薬の有効性と有害性をまとめ,特に常用量依存について言及し報告する。

【行動嗜癖】

コロナ禍におけるギャンブル依存症の動向—GAMPから見えてくること

著者: 横路優子 ,   入來晃久

ページ範囲:P.931 - P.936

抄録
 統合型リゾート(integrated resort:IR)施設議論や,精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)や世界保健機関(WHO)の国際疾患分類の第11回改訂版(ICD-11)で,ギャンブル依存症がいわゆる「依存症」に分類されたこと,さらに近年はオンラインを介したギャンブルの普及やギャンブルに関連した事件報道もあり,世間のギャンブル依存症への関心が高まっている。本稿では当院で実施しているギャンブル依存症に対する集団治療プログラム(Gambling Addiction Meeting Program:GAMP)の参加者の傾向を通して,ギャンブル依存症におけるコロナ禍の影響を紹介する。今後もギャンブル依存症の疾病理解や啓発を行い,広く治療や支援を提供できるよう地域との連携を強化し,一人でも多くの当事者や家族が治療や支援につながり,回復へ向えるような社会を目指したい。

ギャンブル依存症からの回復にピアサポートが果たす役割

著者: 田中紀子

ページ範囲:P.937 - P.943

はじめに
 大谷翔平氏の元通訳水原一平氏が自身でギャンブル依存症だと告白したことでにわかに注目を浴びているが,日本では2016年に特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(通称:IR推進法)が成立し,日本版カジノが現実化したあたりから,やっと「ギャンブル依存症」という言葉が広まっていった。
 政府はカジノへの批判をかわすためにギャンブル依存症対策も同時に推進するとして,2018年にギャンブル等依存症対策基本法を成立させた。そして翌2019年には,ギャンブル等依存症対策基本計画が閣議決定された(国際的な学術用語は「ギャンブル障害」であるが,本稿では「ギャンブル依存症」という通称を用いる)。
 これらの法律が成立する以前のわが国のギャンブル依存症回復支援は,1989年に誕生したギャンブルをやめたいと願う人たちの自助グループGA(Gamblers Anonymous)と,ギャンブラーに翻弄されることから脱したいと願う家族の自助グループギャマノン(GAM-ANON)および,少数のクリニックや民間回復施設が担ってきた。基本法の策定以降は,医療機関,精神保健福祉センターなどの行政機関,民間団体などの支援策が推進されてきたがまだまだ十分ではない。また,各機関の連携が重要だと援助者の間で叫ばれているが,具体的な連携体制が整備されていない。
 そのうえ,ギャンブル依存症を取り巻く環境は,コロナ禍以降一変してしまい,求められる支援はより複雑かつ困難になってきた。
 本稿では,これらの背景を踏まえ,ピアサポートを提供する民間団体および自助グループの役割について述べたい。

ゲーム行動症(ゲーム障害)・ネット使用症(ネット障害)—ICDとDSMにおける位置づけの違いとCOVID-19の影響

著者: 宮田久嗣

ページ範囲:P.945 - P.950

抄録
 ゲーム行動症は,ICD-11では正式に疾病として認められたが,DSM-5-TRではインターネットゲーム行動症として「今後の研究のための病態」に位置付けられていて,正式な病名としては採用されていない。一方,ネットのみでは,いずれの診断基準でも独立した疾病として認められていない。ネットとゲームは密接な関係にあり,オンラインゲーム(ネットにつながったゲーム)の嗜癖性が高いとされる。このようなネットゲーム使用は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンや緊急事態宣言などの行動制限下で増えたとされる。そこには,社会活動を制限され,自宅での生活を余儀なくされたことによる孤独感,心細さ,不安をネットやゲームで解消しようとする行動や,リモートワークなどの需要でネットワーク環境が整備されたことが関係している。本稿では,COVID-19下でのゲーム行動症やネット使用症の特性やリスクファクター,および,そこから得た教訓などを考えたい。

コロナ禍における性行動と性的アディクション

著者: 原田隆之

ページ範囲:P.951 - P.957

抄録
 コロナ禍において,感染防止策として人々の密接な接触が抑制され,繁華街から人流が激減した。そのなかで,人々の性行動には減少がみられたものの,それは一時的なものであった。ただし,自身の性生活に不満を抱いた人は,不安や抑うつ傾向が高かった。一方,オンラインポルノの視聴は増加傾向であり,ポルノ視聴が性生活への不満や不安などへのコーピングとなっていたことが推測される。しかし,この増加傾向も一時的であり,オンラインポルノへのアディクション傾向が増加したという証拠もない。一方で,痴漢・盗撮などのパラフィリア的性行動については,コロナ禍で一時的な減少がみられたものの,人流の増加とともに再び増加していた。

摂食障害と常習窃盗—どこまで嗜癖性で説明できるのか

著者: 瀧井正人

ページ範囲:P.959 - P.965

抄録
 摂食障害(ED)はもともとの病像も重症度もさまざまであり,しかもステージによって病態は大きく変わる。EDが慢性化すると,患者の様相は「禁欲的・強迫的」から「欲求充足的・嗜癖的」に変化する。特に,過食・嘔吐が始まると,抑え込んでいた欲求を充足させる快感をむさぼるようになり,過食・嘔吐は嗜癖となっていく。
 ED発症早期から習慣的に窃盗を行っている患者は少ないが,EDが遷延化すると著明に増加する。EDの遷延化に伴う心理面の悪化により,倫理感・道徳観は減退し,罪悪感も薄れ,もともと高かった窃盗へのハードルは低くなる。しかし,ED患者の窃盗は,窃盗自体が嗜癖となっているというのではなく,過食・嘔吐のための食材を手に入れるためだったり,窃盗や溜め込みが食べることの代償行為となっているなど,EDの病理に伴って二次的に行われているという面が大きい。
 ED患者の窃盗をすべて「クレプトマニア」とみなすことについては,誤解を招く点が大きく,賛成しない。

研究と報告

月経随伴症状に関する調査フォームT(Menstrual Distress Questionnaire-Form T)日本語版の信頼性および妥当性の検討

著者: 下田茉莉子 ,   稲吉玲美 ,   滝沢龍

ページ範囲:P.966 - P.974

抄録
 多くの女性が月経随伴症状に悩まされているが,症状を即時的に評価する尺度が少ないという問題があった。本研究では,女性97名を対象に,海外で多く用いられているMenstrual Distress Questionnaire-Form Tの日本語版について,月経周期を考慮した縦断的研究デザインにおいてその信頼性と妥当性を検討した。分析の結果,十分な信頼性が確認された。また,月経前不快気分障害(PMDD)評価尺度,身体症状評価(SSS-8),不安・抑うつ評価(HADS)との相関を検討し,妥当性が確認された。今後,広く研究や臨床の場面において役に立つことが期待される。

書評

—Suzette M. LaRoche, Hiba Arif Haider 原著 吉野相英 訳—脳波で診る救命救急—意識障害を読み解くための脳波ガイドブック

著者: 河村満

ページ範囲:P.977 - P.977

 ハンス・ベルガーが初めて人の脳波記録に成功したのは1920年代で今からちょうど100年前のことであった(論文発表は1929年)。この成功の背景には,精神機能を測ることへの強い興味があった。ベルガーは脳波実用化の過程で,脳の温度や脳血流の測定にも力を注いだ。α波やβ波の命名もベルガーによる。
 学生時代(1970年代)の実習で,脳波室の先生から脳波検査法の意味を習ったことを今でもよく覚えている。脳波測定の意義は2つで,1つは意識レベルがわかること,もう1つはてんかん診断ができること,と教わった。X線CTがようやく開発されたころであった。それから半世紀を経て脳波診断の意義は拡大し,神経救急診療の場面全般で大きな意義を持つようになった。これらの背景からNCSE(非けいれん性てんかん重積状態)が示され,最近では健忘・失語などてんかん性高次脳機能障害ともいえる病態が特に注目されている。

—中島 俊 著 入職1年目から現場で活かせる!—こころが動く医療コミュニケーション読本

著者: 堀越勝

ページ範囲:P.978 - P.979

 誰もが経験済みのことだと思うが,ゴミ出しをしようとしているところに「ゴミを出せ」と言われて,すっかりスネ夫になってしまった。逆にやるかやるまいかと迷っていると誰かの一言でにわかにやる気満々になったなど,言葉がけのタイミングや投げられた言葉によって思いも寄らない方向にこころが動かされることがある。言葉掛け1つでこのようにこころが動くのならば,医療における言葉掛けがどれだけ患者や医療スタッフのこころに影響を及ぼすかは自明のことである。もしかすると,患者の治療動機や治療継続性を高めるための特効薬は,医療スタッフ側のコミュニケーションスキルそのものなのかもしれない。
 米国の医療現場で発生した訴訟問題の分析結果を見ると,訴訟問題の約7割は患者と医療スタッフ間の人間関係問題であり,内容的には「配慮がない」,「話を聞いてくれない」,「情報を適切に渡してもらわなかった」など,大半はコミュニケーションの問題だとされている。米国は訴訟社会と言われる通り,医療現場で起こる問題が訴訟という形で表面化しやすいのだろう。一方日本は「和を以って貴しとなす」の国であり,コミュニケーション問題は表に出づらいのかもしれない。しかし,見えないすなわち問題なしではなく,患者や医療スタッフが傷ついているのにもかかわらず,「我慢すべきだと思う」,「周りとの不和を避けたい」などの理由から表面化しないのだとしたら,ケアの観点から,その背後には巨大で深刻な問題が横たわっていることになる。

学会告知板

第17回(2024年度)関西森田療法セミナー(入門コース)

ページ範囲:P.974 - P.974

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目次

ページ範囲:P.870 - P.871

次号予告

ページ範囲:P.980 - P.980

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.981 - P.981

奥付

ページ範囲:P.986 - P.986

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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