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特集 アディクション—コロナ禍で変わったこと,変わらないこと 【行動嗜癖】
ギャンブル依存症からの回復にピアサポートが果たす役割
著者: 田中紀子1
所属機関: 1ギャンブル依存症問題を考える会
ページ範囲:P.937 - P.943
文献購入ページに移動はじめに
大谷翔平氏の元通訳水原一平氏が自身でギャンブル依存症だと告白したことでにわかに注目を浴びているが,日本では2016年に特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(通称:IR推進法)が成立し,日本版カジノが現実化したあたりから,やっと「ギャンブル依存症」という言葉が広まっていった。
政府はカジノへの批判をかわすためにギャンブル依存症対策も同時に推進するとして,2018年にギャンブル等依存症対策基本法を成立させた。そして翌2019年には,ギャンブル等依存症対策基本計画が閣議決定された(国際的な学術用語は「ギャンブル障害」であるが,本稿では「ギャンブル依存症」という通称を用いる)。
これらの法律が成立する以前のわが国のギャンブル依存症回復支援は,1989年に誕生したギャンブルをやめたいと願う人たちの自助グループGA(Gamblers Anonymous)と,ギャンブラーに翻弄されることから脱したいと願う家族の自助グループギャマノン(GAM-ANON)および,少数のクリニックや民間回復施設が担ってきた。基本法の策定以降は,医療機関,精神保健福祉センターなどの行政機関,民間団体などの支援策が推進されてきたがまだまだ十分ではない。また,各機関の連携が重要だと援助者の間で叫ばれているが,具体的な連携体制が整備されていない。
そのうえ,ギャンブル依存症を取り巻く環境は,コロナ禍以降一変してしまい,求められる支援はより複雑かつ困難になってきた。
本稿では,これらの背景を踏まえ,ピアサポートを提供する民間団体および自助グループの役割について述べたい。
大谷翔平氏の元通訳水原一平氏が自身でギャンブル依存症だと告白したことでにわかに注目を浴びているが,日本では2016年に特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(通称:IR推進法)が成立し,日本版カジノが現実化したあたりから,やっと「ギャンブル依存症」という言葉が広まっていった。
政府はカジノへの批判をかわすためにギャンブル依存症対策も同時に推進するとして,2018年にギャンブル等依存症対策基本法を成立させた。そして翌2019年には,ギャンブル等依存症対策基本計画が閣議決定された(国際的な学術用語は「ギャンブル障害」であるが,本稿では「ギャンブル依存症」という通称を用いる)。
これらの法律が成立する以前のわが国のギャンブル依存症回復支援は,1989年に誕生したギャンブルをやめたいと願う人たちの自助グループGA(Gamblers Anonymous)と,ギャンブラーに翻弄されることから脱したいと願う家族の自助グループギャマノン(GAM-ANON)および,少数のクリニックや民間回復施設が担ってきた。基本法の策定以降は,医療機関,精神保健福祉センターなどの行政機関,民間団体などの支援策が推進されてきたがまだまだ十分ではない。また,各機関の連携が重要だと援助者の間で叫ばれているが,具体的な連携体制が整備されていない。
そのうえ,ギャンブル依存症を取り巻く環境は,コロナ禍以降一変してしまい,求められる支援はより複雑かつ困難になってきた。
本稿では,これらの背景を踏まえ,ピアサポートを提供する民間団体および自助グループの役割について述べたい。
参考文献
1)Alcoholic Anonymous World Services:Al-Anon's Twelve Steps and Twelve Traditions. Al-Anon Family Group Headquarters, New York 1981[AA日本出版局(訳編):12のステップと12の伝統,改訂版.AA日本ゼネラルサービス,1994]
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