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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻7号

2024年07月発行

文献概要

特集 アディクション—コロナ禍で変わったこと,変わらないこと 【行動嗜癖】

摂食障害と常習窃盗—どこまで嗜癖性で説明できるのか

著者: 瀧井正人1

所属機関: 1北九州医療刑務所

ページ範囲:P.959 - P.965

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抄録
 摂食障害(ED)はもともとの病像も重症度もさまざまであり,しかもステージによって病態は大きく変わる。EDが慢性化すると,患者の様相は「禁欲的・強迫的」から「欲求充足的・嗜癖的」に変化する。特に,過食・嘔吐が始まると,抑え込んでいた欲求を充足させる快感をむさぼるようになり,過食・嘔吐は嗜癖となっていく。
 ED発症早期から習慣的に窃盗を行っている患者は少ないが,EDが遷延化すると著明に増加する。EDの遷延化に伴う心理面の悪化により,倫理感・道徳観は減退し,罪悪感も薄れ,もともと高かった窃盗へのハードルは低くなる。しかし,ED患者の窃盗は,窃盗自体が嗜癖となっているというのではなく,過食・嘔吐のための食材を手に入れるためだったり,窃盗や溜め込みが食べることの代償行為となっているなど,EDの病理に伴って二次的に行われているという面が大きい。
 ED患者の窃盗をすべて「クレプトマニア」とみなすことについては,誤解を招く点が大きく,賛成しない。

参考文献

1)野間俊一:摂食障害における嗜癖性の臨床的意義.精神科治療学 33:1321-1325, 2018
2)Fairburn CG:Overcoming binge eating:The proven program to learn why you binge and how you can stop. The Guilford Press, New York, 2013[永田利彦(監訳):過食は治る—過食症の成り立ちの理解と克服プログラム.金剛出版,2021]
3)野添新一:神経性食欲不振症の行動療法についての研究.医学研究 50:129-180, 1980
4)Khantzian EJ, Albanese MJ:Understanding addiction as self-medication:Finding hope behind the pain. Rowman & Littlefield Publishers, Maryland, 2008[松本俊彦(訳):人はなぜ依存症になるのか—自己治療としてのアディクション.星和書店,2013]
5)瀧井正人:摂食障害という生き方—その病態と治療.中外医学社,2014
6)瀧井正人:続・摂食障害という生き方—医療刑務所から見えてくるもの.中外医学社,2016
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8)Amemiya N, Takii M, Hata T, et al:The outcome of Japanese anorexia nervosa patients treated with an inpatient therapy in an internal medicine unit. Eat Weight Disord 17:e1-e8, 2012[PMID:21997338]
9)瀧井正人,岸本淳司,遠山岳詩,他:医療刑務所における神経性やせ症女性患者に関する研究—第一報:特徴的な諸群への分類.精神経誌 124:601-622, 2022
10)竹村道夫:窃盗癖—嗜癖治療モデルによる対応.精神経誌 114:217-223, 2012
11)American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed(DSM-5). American Psychiatric Publishing , Washington DC, 2013[日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎,大野裕(監訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014]
12)古茶大樹:クレプトマニアの責任能力について.精神経誌 122:822-831, 2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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