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文献詳細

雑誌文献

精神医学66巻9号

2024年09月発行

文献概要

特集 —身体疾患の患者・家族のこころを支える—コンサルテーション・リエゾン精神医学

コンサルテーション・リエゾンにおいて治療拒否に遭遇した際の倫理的考察

著者: 桑原達郎1

所属機関: 1国家公務員共済組合連合会立川病院精神神経科

ページ範囲:P.1188 - P.1193

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抄録
 コンサルテーション・リエゾンにおいては,患者の治療拒否にしばしば遭遇する。その場合,医師は臨床倫理について意識せざるを得ない。臨床倫理の原則は,BeauchampとChildressによって医療倫理の4原則として簡便かつ有用な形でまとめられている。治療拒否は,4原則のうち,自律尊重原則と連動している。同意能力があれば自律尊重原則は機能するが,同意能力がなければ機能しない。同意能力があると評価された場合でも,患者の治療拒否はあらゆる場面で倫理的に正しいわけではない。同意能力がない場合でも,医師は治療拒否を乗り越えて十分に倫理的行動をとることができるわけではない。これらは倫理的要素だけではなく法的な要素が関与している。医師は,法的リスクに対応できる範囲で,最大限倫理的な行動をとるよう努力することが,現実に即した対応であると考えられる。

参考文献

1)Beauchamp TL, Childress JF:Principles of Biomedical Ethics. Oxford University Press, Oxford, 1979
2)桑原博道:摂食障害と身体拘束に関する訴訟事例.日本小児科医会会報 65:78-80, 2023
3)伊藤佑輔:医療過誤 重要裁判例紹介(35)スティーブンス・ジョンソン症候群で入院し,医師の治療方針に基づく治療を拒否する姿勢のみられた患者が緑膿菌感染を引き起こし,多臓器不全・DICで死亡した場合,患者にみられた治療拒否の姿勢の真意は医療行為による苦痛の除去を強く嘆願している意思の表明であるとして,医師に過失があるとされた事例—福岡高等裁判所平成14.5.9判決.民事法情報:総合情報検索誌 210:70-74, 2004
4)宮本礼子:認知症の人の意思決定支援 意志決定支援は毎日の看護・介護から.Best Nurse 29:27-29, 2018
5)大西文恵,出宮武司,正岡洋子:長期入院患者の意思決定を支援する患者-看護師関係の構築について—買い物支援を通して.大阪府立精神医療センター紀要 16:30-32, 2006
6)Dworkin G:Paternalism. The Monist 56:64-84, 1972

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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