icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学7巻11号

1965年11月発行

研究と報告

失認と妄想の精神病理—とくに錯認(Paragnosie)について

著者: 越賀一雄1 浅野楢一1 今道裕之1 竹内邦夫1 松田良一1

所属機関: 1大阪医科大学神経科

ページ範囲:P.967 - P.971

文献概要

 われわれはアルツハイメル氏病と推定される1例の患者について,ゲルストマン症候群に加うるに健忘,失見当識をきたし,実物の認知に粗大な障害はないが,絵画,とくに略図の認知に顕著な失認を呈する図形失認の1例について報告し,同患者が写真の一部分のいちじるしい誤認をきたし,ひいては全体の著明な錯認Paragnosieをきたすことを指摘し,それらの症状を大脳病理学的に抽象的行勁の概念によつて説明し,さらに知覚と行動の不可分な関係に言及し,つぎに同患者に現われた妄想様症状と精神分裂病の妄想との構造の相異について考察し,精神分裂病の妄想では全体が先行し,部分が先行するかに見えるときも,その部分にはすでに変容したかたちの全体が反映しており部分と全体とは相互に移行し合つているに対して,Paragnosieを伴う失認患者の場合,妄想様症状は部分の誤認から部分の誤認へと一方的に付加されて形成され,そこには全体との関連が失われていることを指摘した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら