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文献詳細

雑誌文献

精神医学7巻2号

1965年02月発行

特集 精神療法の限界と危険

第1回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム 講演

東洋的精神療法とその風土

著者: 西丸四方1

所属機関: 1信州大学精神科

ページ範囲:P.106 - P.110

文献概要

 今回のこの学会で「精神療法の限界と危険」というような題目で一席話をするようにとのことである。私は自分が精神療法を熱心に専門にやつている者であるとは思わないが,精神科医としてやらずにすますことはできない。この十何年間か週に2回外来患者をみてそのなかで自分が手がけてみようという患者を選択する。このなかには神経症も分裂病もあるわけで,神経症の患者なら無選択にどういう人にでも進んで精神療法をやれるものでもない。どこかに何かの選択がはたらいている。これは自分が誰とでも同じようにつきあえるものでもなく,友人をつくるのに何かの選択がはたらいているのと同じことである。こういう点にすでに限界がある。
 それから私は毎日病室をひとりでまわつて歩く。それゆえときどきアルバイトに出る受持医よりはよく症状をみているし,患者とよくつきあつているといつてもよい。しかし特定の患者に長くかかつて,精神分析をするなどということはできない。精神療法には幾つも種類があるが,どのやりかたがどういう種類の精神障害にいつそう有効であるということがある程度あるにしても,施行者の好みというものが非常に影響している。それゆえどの精神療法でも自分でやつてみようという人はあるまい。いろいろのやりかたを一応心得てはいるものの,自分の好む二三のもの,あるいはむしろ唯一つのものをやるだけである。べつの人はまた違つたやりかたをする。そしてどの人も自分のやりかたがもつともとはいわなくても一応かなり効があるものであると信じているSelbstsicherである。初めからあるやりかたは自分の好みに合わずまつたくやつてみない人が多い。こういうことはなにも精神療法にかぎらない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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