icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学7巻3号

1965年03月発行

特集 精神分裂病の“治癒”とは何か

第1回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム

医学的人間学の立場から

著者: 加藤清1

所属機関: 1京都大学精神科

ページ範囲:P.205 - P.209

文献概要

I.はじめに
 精神分裂病の治癒とは何かを論ずるにあたつては,最初からいろいろの困難が予想される。すなわち論じらるべき対象である分裂病の原因ならびにその病因論がなお不明であるのみならず,その単一性および限界に関しても,いろいろの見解があつて統一されていないし,また一方自然にあるいは医学的治療によつて治癒した分裂病者においても,治癒にいたるまでの道筋が完全に判明した症例はほとんどないからである。以上の理由のために,現在の段階では分裂病の治癒の本質を経験的に明らかにすることは不可能に近いといつても過言ではない。しかし,それでもなお現在,分裂病の治癒の問題を主題にし,少しでもその本質を明らかにするように求められるのは,逆にこのこころみを通じて,精神分裂病に関する諸問題解決のための一つの突破口が開かれるように期待されているのかもしれない。いずれにせよ,分裂病の治癒を明らかにするにあたつては,方法論上の考慮のたいせつなことは論をまたないが,なによりもまず注意しなければならぬのは,分裂病の治癒現象がいかに複雑多岐であつても,そこから派生した副次的現象を治癒と見誤つては,その治癒を明らかにしうる最初の確実な手がかりを失つてしまうことである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら