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文献詳細

雑誌文献

精神医学7巻3号

1965年03月発行

研究と報告

分裂病領域における人格障害の研究—破瓜病・分裂病後者・境界例のロールシャッハ・テスト知見から

著者: 三浦岱栄1 小此木啓吾1 馬場礼子1 鈴木竜一2

所属機関: 1慶応大学医学部神経科 2三恵病院

ページ範囲:P.235 - P.245

文献概要

I.まえがき
 E. Kraepelinの早発性痴呆の概念以来,精神分裂病の概念のなかにはBleuler流の精神病理学的な特徴とともに,「慢性の進行的な人格障害の進展」という考えが含まれている。たとえばH. Ey1)は,分裂病を「慢性妄想病」(délire chronique)の観点からとらえるとともに,「分裂病とは自閉的妄想的存在,またはこのような存在に向かう運動と進行性の潜勢力(potential évolutif)をもつ存在」と定義している。この運動は,慢性の経過を辿る人格解体の過程であり,臨床的には人格障害のかたちで観察される。すでに三浦2)(1961)は,このような観点から,とくに発病年齢と予後の関係に注目し,武正3)はこの示唆にもとづいて分裂病の予後と発病年齢との関連を調査し,その人格荒廃の傾向は若年者ほど強い事実を指摘し,同時にこのような人格の解体を示す症例と完全な寛解をきたす症例を,同じ分裂病の名のもとに包括する立場に疑義を提出している。
 一方,最近わが教室では境界例・分裂病領域に対する精神療法的研究4),5)が小此木6),7)を中心にこころみられているが,この接近は,つきつめるとその人格障害の精神療法であるという事実が痛感されている。この課題をたな上げにしては,分裂病の治療を研究することは困難だからである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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