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文献詳細

雑誌文献

精神医学7巻5号

1965年05月発行

文献概要

研究と報告

Diazepamの治療効果と,その臨床作用に関する二,三の考察—とくに「うつ状態」に対する効果について

著者: 笠松章1 平井富雄1 大塚ひろみ1

所属機関: 1東京大学医学部小石川分院精神神経学教室

ページ範囲:P.435 - P.440

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I.はじめに
 神経症の治療においてもつともたいせつなのが精神療法であることは論をまたない。しかしその治療の初期には,患者の不安・焦躁感の除去が必要で,これによつて医師-患者の信頼関係が好ましいかたちで成立し,精神療法の進展がはかられやすくなることもしばしば経験される。Chlordiazepoxideの臨床実地への応用により,神経症の治療が容易になつたことは,このような事情にもとづくところが多いと思われる。
 近年chlordiazepoxideと類似した構造をもつdiazepamが開発され,神経症の治療上新しい武器となつていることは,多くの国外文献の報告によりほぼ確認されたといつてよい。これら文献を通覧すると,本剤の精神緊張(不安など)緩解作用,鎮静作用などの精神安定作用が指摘され,chlordiazepoxideに比し,より強力であるばかりでなく,臨床上さらに広いスペクトラムをもつことが報告されている。また動物における薬理実験のうちには,本剤が動物の馴化のみでなく,刺激作用を呈する事実を指摘しているものもある。臨床上では,抑うつ反応,精神分裂病の一部,境界症例などに対しては,本剤がenergizerとしての作用を発揮し,この点でchlordiazepoxideと異なるenergizer typeの作用をもつという報告(Feldman R. S. ら)もある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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