文献詳細
研究と報告
難治性てんかんの一断面—Forced Normalizationの症例について
著者: 下田又季雄1 難波昌弘1 芦田泰1 北川達也1
所属機関: 1鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設
ページ範囲:P.811 - P.818
文献概要
てんかんの薬物治療にあたつて,薬物のもつ副作用を考慮することは無論大切なことであるが,抗てんかん薬持続服用中ときとして発作の消失ないしは改善とともに,気分の変調,乱暴,兇暴性,抑うつなど多彩な精神症状を呈し,そのために発作自体よりも家族隣人にとつてより困惑する事態となることがある。
1953年Landoltはこのような現象の発現と異常脳波波型の改善との密接な関係をみいだし,この現象をとくにForced Normalizationと呼び報告している。一般にこのForced Normalizationは側頭葉てんかんなどのように脳波上Focusを持つてんかんにしばしば認められ,Focusのないてんかんにおいては比較的まれであると考えられているが,実際臨床上詳細に一般のてんかん患者の経過観察を,脳波検査と平行して注意深く行なえば決していままで考えられているほどまれなものではなく,日常てんかん患者治療中しばしば遭遇する現象ではなかろうか?と,われわれは考えるにいたつた。すなわちわれわれは以上の観点から長期にわたり,いわゆる難治性てんかん患者の治療ならびに経過観察を詳細に行ないすでに多数の本症例を経験しているが,今回はそのうちとくに著明なForced Normalizationを呈したものについて,Landoltの報告と比較検討を行なつたのでその結果について述べる。
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