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文献詳細

雑誌文献

精神医学8巻1号

1966年01月発行

文献概要

研究と報告

Pre-schizophrenic Stateとしての境界状態—発病後3年以上を経て境界状態にあつた32例の7年後の予後調査(その1)

著者: 三浦岱栄1 小此木啓吾1 延島信也1 河合洋1 岩崎徹也1 北田穰之介1 武田専2 鈴木寿治2 鹿野達男3

所属機関: 1慶応大学医学部神経科 2武田病院 3日吉病院

ページ範囲:P.17 - P.22

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I.まえがき
 いわゆる境界例に対する組織的な精神療法的接近から,われわれは,これらの症例群に関するさまざまの精神医学的知見を報告し,さらにまた,その概念が含む諸観点を明らかにしてきた。この研究の途上で,いわゆる境界状態(borderline state:Robert Knight)を一種の移行段階(transitionalstate)にあるものとみなして,これから分裂病に進行するか(pre-schizophrenic),神経症的な範囲に回復するか,あるいはすでに分裂病状態を経た一種のpost-schizophrenic stateなのか,を考慮する動的な観点と,その境界状態がきわめて慢性の経過をたどり,たえざる動揺をつづけながらも,一貫して境界状態の範囲にとどまり,むしろこの種の症例を一つのclinical entityとみなすべきであるとする観点(borderline patient:M. Schmideberg)の,二つの観点が"境界例"というコトバに含まれている事実が注目された。すなわちわれわれは"境界例"というコトバを,境界状態(borderlinestate)という意味でだけ用いるべきか,さらにそのなかには境界患者(borderline patient)とよぶべき症例も実在するか,という課題に直面するにいたつたのである。たとえばわれわれが,直接精神療法中の19例の境界例を検討したところ,全例が治療期間を含めると発病後現在まで3年から10年を経ていることが認められる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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