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特集 宗教と精神医学 第63回日本精神神経学会総会シンポジウ厶
離人体験と宗教信仰
著者: 土居健郎1
所属機関: 1聖路加国際病院精神科
ページ範囲:P.908 - P.910
文献購入ページに移動I.宗教の心理的意味
歴史的社会はすべてなんらかの宗教を中心として発生してきたといわれる。すなわち宗教は社会を形成する各人を結びつける靱帯の役割をはたしてきたのであつて,古来の成人式が宗教的意義を有しているのはこのためである。しかし現代のように社会が宗教的思想的に複雑かつ混乱しているときには,子どもが成人して社会人となる過程において,宗教は表立つた役割を演じてはいない。それでも宗教的心理は潜在的にそこにはたらいているのであつて,ときには積極的に宗教を求める者もいるほどである。これら積極的求道者は宗教によつて精神的危機をのりきろうとする。しかし危機に破れれば,なんらかの精神障害を経験せねばならない。以下に記す症例Tは,診断的には分裂病圏内に属すると考えられるが,求道の過程で発病し,かつ求道の完成によつて治癒している点,上述の観点を裏書きしていると思われるのである。
歴史的社会はすべてなんらかの宗教を中心として発生してきたといわれる。すなわち宗教は社会を形成する各人を結びつける靱帯の役割をはたしてきたのであつて,古来の成人式が宗教的意義を有しているのはこのためである。しかし現代のように社会が宗教的思想的に複雑かつ混乱しているときには,子どもが成人して社会人となる過程において,宗教は表立つた役割を演じてはいない。それでも宗教的心理は潜在的にそこにはたらいているのであつて,ときには積極的に宗教を求める者もいるほどである。これら積極的求道者は宗教によつて精神的危機をのりきろうとする。しかし危機に破れれば,なんらかの精神障害を経験せねばならない。以下に記す症例Tは,診断的には分裂病圏内に属すると考えられるが,求道の過程で発病し,かつ求道の完成によつて治癒している点,上述の観点を裏書きしていると思われるのである。
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