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特集 うつ病の臨床 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
著者: 満田久敏1
所属機関: 1大阪医大精神科
ページ範囲:P.976 - P.977
文献購入ページに移動 「うつ病の診断基準」について考える場合に,まず思い出されるのは,戦前にK. SchneiderとBumke学派を代表したStauderの間で,躁うつ病の限界Umgrenzungについてたたかわされた論争である。ご存じの方も多いと思うが,Schneiderは「躁うつ病という病気は比較的珍しいものだ」と主張したのに対し,Stauderは「躁うつ病なんか,ごくありふれた精神病にすぎない」と反駁し,真向うから対立したのである。当時,Bumke教授もSchneider教授も,大学病院と市立病院の違いはあつたが,2人ともミュンヘン市に勤めていた。だから同じミュンヘンのなかで,躁うつ病の頻度がそんなに違うはずはなく,むろんこれは,この病気に対する診断基準がBumkeとかSchneiderのような大家のあいだでも——あるいはむしろ,大家であるためにといつたほうがよいかもしれないが——それほど大きく相異することを物語るもので,はなはだ興味深い。実は私,最近この2人の論文をいま一度読みなおしてみたのであるが,こんにちでもかなり読みごたえがあつて,それだけに躁うつ病については,1930年代と30年後のこんにちの間にも,治療の面はべつとして,診断の面ではそれほど大きな違いがないともいえる。
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