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文献詳細

雑誌文献

精神医学8巻2号

1966年02月発行

研究と報告

拘禁反応と訴訟能力

著者: 中田修1

所属機関: 1東京医科歯科大学犯罪心理学研究室

ページ範囲:P.113 - P.118

文献概要

I.はしがき
 筆者はかつて東京拘置所に勤務していたとき,被告人が長期にわたつて偽痴呆,昏迷などの拘禁反応をしめし,裁判審理が中止されて勾留執行停止となり,精神病院に送致されるか社会に釈放され,精神病院に送致されたものは軽快して拘置所にもどると再び同様な拘禁反応をしめし,社会に釈放されたものはすぐに罪を犯して再び拘置所にもどると同様な拘禁反応をしめす,すなわち,並禁—拘禁反応—精神病院送致—拘禁—拘禁反応という経過をとるものや,拘禁—拘禁反応—釈放—再犯—拘禁—拘禁反応という経過をとるものが少なくないことを経験した。筆者はこの種の定型的な事例を,詐病と疑わしい拘禁反応の症例として報告したことがある19)。また,この種の事例に対する対策の一つとして,訴訟能力の問題をとりあげ,十分な文献的知識なしに,つぎのような意見を発表した18)。「かれらは犯行時は責任能力はあり,刑法第39条の心神喪失に該当しないものであるゆえに,証拠が十分であれば当然刑を言渡されるべきものである。しかし現在の精神状態より訴訟能力の点において問題になると考えられる。団藤教授によれば,訴訟能力は意思能力であり,具体的には被告人としての重要な利害を理解し,それによつて相当な防御をすることのできる能力であるという。拘禁性精神病のなかには訴訟能力があると判定される例もあるが,偽痴呆や昏迷の状態では弁論能力も欠陥があり,その状態が完全に意識的な詐病でないゆえに,意思能力においても十分であるとは考えられないのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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