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文献詳細

雑誌文献

精神医学8巻2号

1966年02月発行

文献概要

研究と報告

抗うつ剤Nortriptylineの使用経験

著者: 刑部侃1 安藤克己1 柳沢義博2

所属機関: 1金沢大学医学部神経精神医学教室 2みどりケ丘病院

ページ範囲:P.147 - P.153

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 金沢大学神経精神医学教室ならびに関係諸病院においてamitriptylineのmonomethyl誘導体であるnortriptylineを試用し,つぎの結果を得た。
 (1)各種抑うつ状態を呈する患者25例に2週間以上投与して,5例にいちじるしい改善,8例に改善,あわせて13例,52%にかなりの改善が見られた。病型別では,退行期うつ病を含めた内因性うつ病では13例中8例,62%,それ以外のうつ状態では12例中5例,33%が軽快した。
 使用対象を病状のおもさが,中等度以下の症例(DRSS80以下)にかぎると,13例中11例,85%に改善がみられ,本剤の使用を選ぶ場合には,症状だけでなく重症度をも考慮することが重要であると思われた。
 (2)効果の発現に要した期間は,他の抗うつ剤に比較してかなり早く,改善例13例中明らかな改善(DRSS70以下)を示した時期が,1週間以内のもの6例,2週間以内が4例であり,早いものでは2〜3日で効果が見られた。このことは,2週間おそくとも3週間以内にかなりの改善がもたらされない場合,それ以上本剤を継続しても,あまり効果が期待できないことを示している。
 (3)個々の症状の推移では,心気症状をのぞいて,抑うつ気分と抑制,その他の症状はほぼ平行して改善される傾向が見られた。
 (4)有効投与量は30〜75mg/日で十分であり,大量にすると副作用が現われやすく,また,それだけ効果があがるとはいえなかつた。
 (5)副作用としては,程度は強くないがほとんどの例になんらかの訴えが見られ,とくに口渇,頭重,軽度の睡気,便秘などが多かつた。大量投与では,振戦,筋緊張亢進を中心とした錐体外路症状を一過性に呈したものが1例あつた。
 (6)感情鈍麻,無為,自閉などを主症状とする陳旧性精神分裂病患者12名に150mg/日を4週間にわたり投与した結果,軽度ではあるが5例に挙動の増加,4例に作業意欲の向上を認めた。しかし,病的体験に対してはまつたく効果がなかつた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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