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研究と報告
肺結核合併精神障害者に対するCycloselineの使用経験
著者: 高塩洋12 高山光太郎1 市川達郎1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部神経科 2桜ケ丘保養院
ページ範囲:P.163 - P.167
文献購入ページに移動Streptomyces orchidaceusから得られる抗生物質Cycloserine(D-4-amino-3-isoxasolidone)の抗結核作用については,1955年Welchら1),Epsteinら2)により基礎的,臨床的研究が発表されて以来にわかに注目され,これまでに多くの研究が発表されている。わが国でも1957年堂野前ら3)によつてCycloserine(以下CSと略)の肺結核症に対する治療効果が発表され,結核予防法に採用されてから広く実用に供されている。CSの副作用として精神神経障害が起こることについては,Epsteinら2)4)の論文にもすでに示唆されていたが,その後の諸氏の研究5)〜9)から精神神経障害がCSのおもな副作用であることが明らかにされた。これらの研究によれば,頭痛,めまい,不眠など不特定の神経症状のほか,記憶障害,注意力減退,思考不纒,傾眠,嗜眠などの意識障害,てんかん様けいれん発作,多幸,抑うつ,興奮および精神分裂病様病像を呈する精神障害などがあげられており,これらの諸障害の発生頻度は報告者により異なるがCS服用患者の10〜60%に見られている。CS投与によると考えられているこれらの精神神経障害は,多くの場合可逆的であるが不可逆性のものもあり4)10)11),精神分裂病あるいはうつ病様病像を呈するものについては,精神分裂病あるいはうつ病が誘発されたと考える著者もある4)10)11)。
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