文献詳細
特集 精神活動とポリグラフ
文献概要
I.まえがき
脳波がてんかんその他の器質的脳疾患や睡眠,麻酔などのさいに明らかな変化を示し,これが脳波の臨床検査上の価値をたかめていることは周知のとおりであるが,これにひきかえ,種々の精神状態や心理的変化における診断的意義は高いとはいえない。たとえば脳波は緊張や「くつろぎ」といつたような比較的非特異的な心理的変動はかなりよく反映するが,より微妙な情緒的変動などに対しては鋭敏な指標とはいえないし,また精神分裂病や躁うつ病のようないわゆる内因性疾患では,いちじるしい精神症状があるにもかかわらず,変化に乏しいのである。
これらのことから,筆者は脳波以外の現象を同時記録することにより,脳波だけでは十分につかみえない脳や生体の動きをとらえることをくわだて,約10年前,古閑らとともに,ポリグラフィの研究14)を始めたのであるが,最近は,とくに覚醒閉眼時の眼球運動について若干の興味ある知見を得ているので,主として脳波と対照しつつ,これについて述べてみたい。
脳波がてんかんその他の器質的脳疾患や睡眠,麻酔などのさいに明らかな変化を示し,これが脳波の臨床検査上の価値をたかめていることは周知のとおりであるが,これにひきかえ,種々の精神状態や心理的変化における診断的意義は高いとはいえない。たとえば脳波は緊張や「くつろぎ」といつたような比較的非特異的な心理的変動はかなりよく反映するが,より微妙な情緒的変動などに対しては鋭敏な指標とはいえないし,また精神分裂病や躁うつ病のようないわゆる内因性疾患では,いちじるしい精神症状があるにもかかわらず,変化に乏しいのである。
これらのことから,筆者は脳波以外の現象を同時記録することにより,脳波だけでは十分につかみえない脳や生体の動きをとらえることをくわだて,約10年前,古閑らとともに,ポリグラフィの研究14)を始めたのであるが,最近は,とくに覚醒閉眼時の眼球運動について若干の興味ある知見を得ているので,主として脳波と対照しつつ,これについて述べてみたい。
掲載誌情報