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研究と報告
向精神薬長期服薬者の肝機能について
著者: 松本淳子1 村崎光邦1 星昭輝1 小口徹1 浅井昌弘2 馬場謙一2
所属機関: 1井之頭病院 2慶応大学医学部神経科
ページ範囲:P.225 - P.232
文献購入ページに移動Phenothiazine系薬物を中心とする向精神薬が,わが国において用いられるようになつてから,もう10年以上を経ている。昭和30年ごろよりの実験的試用に始まり,昭和32年からは電気ショック療法,インシュリンショック療法に代わつて精神科治療の王座を占めるにいたり,精神病患者に対しては何をおいてもまず,向精神薬を投与するといつた形式にまで発展してきている。
この間,その卓越した向精神作用と同時に幾多の副作用についても報じられている。すなわち,かなり重篤な黄疸をきたした報告例を初めとして6)11),死亡にいたらない黄疸の報告例は枚挙にいとまがないし,顆粒球減少症を初めとする血液像におよぼす問題も多々論じられている3)〜5)7)9)17)。しかしながら,これらの副作用についての報告例は,使用開始後比較的早期に急性に発現してくるものであり,かつほとんどの患者においては,これらの副作用はまつたくなく安全であるといわれてきた。そのうえ最近にいたつては,そうした早期の副作用についてもほとんどその声を聞かなくなり,長期にわたつて無批判的に使用されつづけている。
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