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特集 精神分裂病の家族研究 シンポジウム「精神分裂病の家族研究」に対する指定討論および一般質疑
講演4に対する指定討論
著者: 辻悟1
所属機関: 1阪大神経科
ページ範囲:P.302 - P.303
文献購入ページに移動 初めに,三浦教授が報告されました広汎な貴重な成績に心から敬意を表したいと思います。それに対して討論者の経験はまだ日も浅く,きわめて素朴な段階にとどまります。したがつて,本討論者の討論は,ご報告の全般に対する的確な討論というよりも,末梢的な討論になることを恐れますが,まず討論者の立場を,1)教授のご報告では,projective methodを中心とする心理テスト・バッテリーが,重要なアプローチの一つとなつており,それに対してわれわれは相当以前からいろんな方面にわたつて経験をもちえたこと,および 2)素朴な研究は,素朴であるがゆえにまた棄てがたいよさをもつという点に定位して,二,三の意見を申し述べ,討論者の責をはたしたいと思います。
1.まず第1に,この種家族力動に関する研究は,それに関係する要因の複雑さのために,比較的客観的なものとしてとらえることが困難であり,したがつてプロジェクティブ・メソッドを中心とする心理テストが今後も研究方法として重要な位置を占めると考えられます。それに対してご報告は,まず各種心理テストの綿密な位置づけの検討をされました。これは心理テストの適用にさいして基木的に重要な作業であり,その点を明確にしていただいたことは非常にありがたいことだと思います。報告されました各種テストの位置づけは,だいたいわれわれを納得させてくれます。ただTATに関しましては「意外に家族像の把握が乏しく」として,病者の家族の人格特徴を明らかにするには,あまり役だたないかのことくに評価されましたが,われわれの経験では,「家族像の把握が乏しい」点に,精神分裂病家族の人格上の障害の重要な特徴が現われていると考えます。したがつてTATに見られるこの特徴は,ロールシャッハ・テストに見られる特徴について重要であると思います。
1.まず第1に,この種家族力動に関する研究は,それに関係する要因の複雑さのために,比較的客観的なものとしてとらえることが困難であり,したがつてプロジェクティブ・メソッドを中心とする心理テストが今後も研究方法として重要な位置を占めると考えられます。それに対してご報告は,まず各種心理テストの綿密な位置づけの検討をされました。これは心理テストの適用にさいして基木的に重要な作業であり,その点を明確にしていただいたことは非常にありがたいことだと思います。報告されました各種テストの位置づけは,だいたいわれわれを納得させてくれます。ただTATに関しましては「意外に家族像の把握が乏しく」として,病者の家族の人格特徴を明らかにするには,あまり役だたないかのことくに評価されましたが,われわれの経験では,「家族像の把握が乏しい」点に,精神分裂病家族の人格上の障害の重要な特徴が現われていると考えます。したがつてTATに見られるこの特徴は,ロールシャッハ・テストに見られる特徴について重要であると思います。
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