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特集 薬物と精神療法 第2回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
精神分裂病における薬物と精神療法
著者: 宮本忠雄1
所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室
ページ範囲:P.461 - P.465
文献購入ページに移動I.はじめに
この「薬物と精神療法」のシンポジアムのなかでとくに私にあたえられた個別テーマは「人間像の問題を中心として」というものである。しかし,ひとくちに「薬物」といつてもその種類や作用はきわめて多様であり,他方,「精神療法」にしてもその方法や目標の多様性は薬物のそれにまさるともおとらない。このことは「薬物と精神療法」というテーマだけでも普遍的レベルで均一に論ずることを困難にするが,そのうえ「人間像」というこれまた多義的な項目をさしはさむことになれば,それ自体非常に魅力的なテーマであることはべつにして,どうしても抽象的な論調とならざるをえなくなる。
そこで,ここでは精神病とりわけ分裂病の場合を主要な対象としてとりあげることにするが,これによつて「薬物と精神療法」の問題はかなり限定されてくる。しかし,この場合,通常の薬理学的発想のように,「ある薬物が患者のどこにどう作用するか」とか,精神療法家がよく問題にするように,「ある技法が患者をどのようにして治癒にもたらすか」といつた,薬物や精神療法を主要名辞にすえてそれらの「作用機序」や「治癒機転」を考えるのでは,やはりメカニズムが論議の対象となつて,いきおい人間の主体性は見失われ,したがつて人間像の問題につながつてこない。(むろん「作用機序」や「治癒機転」の研究がべつの関連で正当性をもちうることは断わるまでもない)。
この「薬物と精神療法」のシンポジアムのなかでとくに私にあたえられた個別テーマは「人間像の問題を中心として」というものである。しかし,ひとくちに「薬物」といつてもその種類や作用はきわめて多様であり,他方,「精神療法」にしてもその方法や目標の多様性は薬物のそれにまさるともおとらない。このことは「薬物と精神療法」というテーマだけでも普遍的レベルで均一に論ずることを困難にするが,そのうえ「人間像」というこれまた多義的な項目をさしはさむことになれば,それ自体非常に魅力的なテーマであることはべつにして,どうしても抽象的な論調とならざるをえなくなる。
そこで,ここでは精神病とりわけ分裂病の場合を主要な対象としてとりあげることにするが,これによつて「薬物と精神療法」の問題はかなり限定されてくる。しかし,この場合,通常の薬理学的発想のように,「ある薬物が患者のどこにどう作用するか」とか,精神療法家がよく問題にするように,「ある技法が患者をどのようにして治癒にもたらすか」といつた,薬物や精神療法を主要名辞にすえてそれらの「作用機序」や「治癒機転」を考えるのでは,やはりメカニズムが論議の対象となつて,いきおい人間の主体性は見失われ,したがつて人間像の問題につながつてこない。(むろん「作用機序」や「治癒機転」の研究がべつの関連で正当性をもちうることは断わるまでもない)。
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