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特集 精神医療体系のなかでの精神病院の位置づけ 精神病院の機能とその限界 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
精神病者の入院生活および退院に対する意識と社会復帰対策—病院のありかたについての資料
著者: 古川復一1 矢野和之1 永田実男1 鈴木伸治1
所属機関: 1茨城県立友部病院
ページ範囲:P.542 - P.546
文献購入ページに移動近年精神病者,とくに精神分裂病患者は,面期的な治療法の進歩により病的体験などの激しい急性症状は消褪しやすくなり,いわば院内寛解に達して無為自閉の傾向をもつて入院生活をおくるものが多くなつてきた。そしてしだいに,病院に蓄積してきて,ちまたにある多くの早急治療を要する患者の入院をも阻害しているのが現状である。したがつて少しぐらい病床を増加させても,多くの入院できない患者が国中に放置されるようにみえるのもやむをえないしだいである。
われわれはこれらの院内寛解患者を,江副勉や小林八郎らのいうように「個々の症状にはあまりこだわらず,人間存在として全体的に再教育し」その「社会的適応と経済的独立とを支持し」て社会に復帰させることが現在の精神病院に課せられたひとつの大きな課題であると考えた。そこでこれら院内寛解の患者が,入院生活および社会復帰についてどのような意識態度をもつているかを調査し,これと友部病院でいわゆる就職退院させた者および一般退院患者の予後調査とを比較検討して,これら院内寛解患者を社会復帰させ,予後をよりよくするためには,病院は何をなすべきかについて考えてみた。
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