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雑誌詳細

文献概要

特集 精神医療体系のなかでの精神病院の位置づけ 精神病院の機能とその限界 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム

官公私立病院の機能分化

著者: 伊藤正雄1

所属機関: 1直井病院

ページ範囲:P.550 - P.554

I.精神病院の機能分化はなぜ必要か
 ごく最近まで精神障害者はほとんどすべて入院して治療されるのが原則であつた。退院できたものは退院と同時に病院とは縁がきれてしまい,再発すれば入院する,入退院をくりかえしつづけるか,あるいは一度も退院の機会に恵まれぬままほとんど永久に入院をつづけ「自分の排泄物にまみれて文字どおり肉体的にも精神的にもくさつてしまう1)」という古の悲惨な状態ではないにしても,精神病院での治療が精神医療の始発駅であり終着駅であつた。このような時代でも精神病院の機能分化という観点からみると多少の分化はみられた。すなわち外来治療と新鮮患者に対する身体的治療が行なわれた都会の病院や大学病院などの治療病院といなかの大病院のように陳旧患者を多くかかえこんだ収容病院との分化であつた。しかしその差異はきわめてわずかなものであつて,いずれも収容施設といつて大差はなかつた。
 医学の進歩は治療の方法をつぎつぎに細分化し治療対象もそれに従つて細分化されてゆく。およそ10年前から向精神薬が開発使用されはじめ,積極的な生活療法の努力,精神病院の開放制のこころみと相ならんで精神障害者の社会復帰と通院治療とが可能となつた。このことから精神障害者に対しても早期発見・早期治療.早期退院・後保護という,一般の疾病に対すると同様の医療体系が要求されるようになつた。精神病院はここに初めて,かつての収容施設から治療病院へとの脱皮が行なわれることとなつた。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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