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文献概要

特集 内因性精神病の疾病論 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム

分裂病の脳病理学的背景

著者: 立津政順1

所属機関: 1熊本大学精神神経科

ページ範囲:P.5 - P.10

 (1)薄切片-鍍銀染色標本によると,分裂病者脳には,軸索の肥大・コントラストの鮮鋭化・硬化・直線的走行・乱雑な配列や尖頂樹状突起の肥大・嗜銀性の増強などの特異な組織病理像が認められる。これら所見のうち軸索の所見がもつとも特徴的である。これらの所見は全脳に分布しているが,終脳にもつとも著明で,尾方に下るに従いかるくなる。
 (2)上記の病理学的所見と分裂病との間には深い関係のあることが,つぎのような諸点から推測される:a.問題の病理学的所見の高度のものは分裂病者脳に圧倒的に高率にみられるのに反し,対照脳ではそれら所見の証明されないことが多い;b.組織病理学的診断と臨床診断との一致率がかなり高い;c.組織病理学的所見の程度と臨床症状の程度との間にある程度の平行関係が認められる。
 (3)ただし,持続的に幻覚のある例では,疎通性と感情の障害は比較的かるいのに,全脳に著明な病理学的所見がみられる。また,昏迷状の例では,そのアンモン角に変化がめだっていた。
 (4)分裂病との区別の困難な“分裂病質”・遺伝負因をもつ幼児期発病の“分裂病”・高齢発病の“分裂病”・躁うつ状の周期を伴う分裂病の例の脳にも,上記の組織病理像が証明された。
 (5)ヒロポンの長期乱用・脳炎・脳外傷などによる外因性精神障害者脳では,人格像に分裂病様変化のある例において,尖頂樹状突起の分裂病様変化が認められた。
 (6)長期にわたるヒロポン投与モルモット脳に,分裂病者脳におけるものと似た病理像が証明された。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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