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研究と報告
AB-1404(Placidyl)による脳波睡眠賦活
著者: 福島裕1 山鼻康弘1 古市康昌1 西谷静子2
所属機関: 1弘前大学医学部神経精神医学教室 2弘前大学医学部付属病院脳波室
ページ範囲:P.53 - P.57
文献購入ページに移動これまで広く臨床脳波にもちいられてきた脳波賦活法として,Pentetrazol,Megimideなどの注射賦活法は,その賦活効果は高いが,注入量によつては非てんかん者ないしは健常者にも,いわゆる発作波を賦活するため,この種の賦活発作波形の臨床的意味づけにおいて混乱をまねいたことは否定できない。また,この種の賦活法が多かれ少なかれ被検者に与える苦痛も常用の賦活法として好ましいものではない。これに対して,睡眠賦活法は生理的現象である睡眠を賦活法として利用するものであり,その効果も以前より認められてきた1)2)。最近著者の一人福島3)も賦活法の研究において,睡眠脳波における局所異常所見の賦活などの成績を示しつつ,この賦活法の価値をあらためて強調した。
ところで,睡眠賦活には自然睡眠がもつとも望ましい。これは,催眠剤使用時にしばしばみられるような不快な副作用や,薬剤の脳波パターンないしは異常所見賦活におよぼす影響を避けることができるからである。しかし,脳波検査の実際にあたつては,かぎられた時間内に睡眠を得る必要があるため,催眠剤による誘発睡眠記録が行なわれることが多い。そこで,使用される催眠剤が問題となる。つまり,催眠効果が高く,しかも自然睡眠と同じ条件をもたらす薬剤が望まれる。従来,広く睡眠賦活のために使用されてきた催眠剤として,Seconal,Ravonaがあげられるが,これらのバルビツール系催眠剤は脳波パターン上に速波を増強しやすく,また脳波検査後に酩酊様状態を残したり,睡眠の遷延をもたらすことが少なくない。
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