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文献詳細

雑誌文献

精神医学9巻11号

1967年11月発行

文献概要

研究と報告

対鏡症状にみる社会性の病態

著者: 高橋徹1

所属機関: 1国立精神衛生研究所

ページ範囲:P.853 - P.857

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Ⅰ.まえおき
 人が鏡を見るということは日常的なことがらである。しかし,めだつ場合がある。たとえば,acne vulgarisを気にしている人が毎日長い時間鏡を見ていたり,末梢性顔面神経片麻痺の人が日に何度も鏡を見ながらしきりに表情をためして暗い気持ちになつたりする。なかには,なんでもないはずの骨盤の形が尋常でないという変わつた考えにとりつかれている男の患者が,みんな寝てしまつてから自分の部屋でかくれて鏡の前で家庭医学の本の解剖図と自分の腰の形とを比べて見ているという変な印象を受ける場合や,人が見ていても平気で半時間も洗面所の鏡に顔を近づけたり,遠ざけたり,笑う表情をしたり,目を細めたり,頬をさすつたりしていて,なぜ見ているかたずねてもその理由が深くつかめない不可解な印象を与える例(Ais. 31歳,男)もある。
 P. Abelyは,鏡のようにものを映す表面に顔やからだの一部や全身を映して,しきりにしかも長いあいだ眺める要求のあらわれを,精神疾患の徴候という面からとらえて対鏡症状(le signe du miroir)と名づけている1)。この定義があいまいなのでもつと限定するために,鏡を必要とする十分な理由なく使用しなければならない,という点を強調しようとこころみた学者もいるが,かれ自身も非のうちどころのない定義を与えることはほとんど不可能だと述べた2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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