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回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・17
精神鑑定にあらわれた世相
著者: 内村祐之12
所属機関: 1東京大学 2日本学士院
ページ範囲:P.882 - P.890
文献購入ページに移動 さきに(第11回)私は,自分が取り扱つた精神鑑定例の中で,最も知性が高く,また精神病理学的にも珍しい2人の人物のことを書いたが,今回は,戦中,戦後の非常時に鑑定した幾つかの特殊例について述べてみたい。これらは,いつの時代にも起こり得る性質の犯罪であるが,戦時中の厳重な物資統制の下で,あるいは終戦直後の貧窮と,警察力の不備の状況下で,多少にかかわらず誇張された形で現われたという意味で,時勢の一面をうかがわせるに足る例である。
東京に転任以来,私は,この大都市で起こつた事件はもちろん,他の地域で起こつた事件であつても,特殊なものについては,精神鑑定を依頼されることが多かつた。これらの鑑定例のうち,司法精神医学的内容のものは,専門学会の宿題報告として(『精神神経学雑誌』53巻,昭和26年),また多少通俗的のものは単行本として(『精神鑑定』創元社,昭和27年)発表したので,ここでは,事件や鑑定の内容よりも,むしろ時代的影響というところに重点を置いて述べたいと思う。
東京に転任以来,私は,この大都市で起こつた事件はもちろん,他の地域で起こつた事件であつても,特殊なものについては,精神鑑定を依頼されることが多かつた。これらの鑑定例のうち,司法精神医学的内容のものは,専門学会の宿題報告として(『精神神経学雑誌』53巻,昭和26年),また多少通俗的のものは単行本として(『精神鑑定』創元社,昭和27年)発表したので,ここでは,事件や鑑定の内容よりも,むしろ時代的影響というところに重点を置いて述べたいと思う。
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