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特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
Praecoxgefühlの性格について
著者: 越賀一雄1
所属機関: 1大阪医科大学神経科
ページ範囲:P.117 - P.120
文献購入ページに移動精神医学においてわれわれが診断をくだす場合,われわれ精神病医自身がそれぞれの患者に対していだく感情,患者から受ける印象,あるいは直観,洞察がきわめて重要な役割をはたしていることは,われわれが日常臨床において体験しているところであり,またすでに多くの学者によつて指摘され,強調されているところである。たとえば感情診断(Gefühlsdiagnose)とか,洞察診断(diagnostique par pénétration)などとよばれるのは精神医学の診断において単に知性のみでなく,感情もまた有力な武器であることを物語つている。K. SchneiderのいうAnhiebsdiagnoseというのもこの種の診断であることはいうまでもない。
周知のごとくRümkeは精神分裂病を分かち,一方を真性精神分裂病(genuine Schizophrenie),またはechte Schizophrenieとよび,それ以外のものはすべて偽似精神分裂病(Pseudoschizophrenie)として両者を区別している。そしてこのgenuine Schizophrenieの患者についてある程度臨床経験をつんだ精神病医ならば,Rümkeのいうようにヘルシンキであれ,パリ,ロンドン,トロントであれ,したがつて大阪であろうと東京であろうと世界のどこにおいても,患者を一見したとき一様にかれらについていだく特種な感情をRümkeはPraecoxgefühl,またその体験をPraecox-Erlebnisというのである。種々の精神障害の患者のなかでこのPraecoxgefühlをわれわれにいだかせる精神分裂病患者がいる事実は認めざるをえないと思う。
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