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特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
Praecoxgefühlと無
著者: 西丸四方1
所属機関: 1信州大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.125 - P.128
文献購入ページに移動Rümkeは精神分裂病を真正のものと偽性のものに分かち,偽性のものは種々の既知,未知の原因で起こり,いわゆる分裂病独特の症状を呈するものもあり,防衛機制で説明されるのもあり,なんの治療によるにしても治癒するものはだいたい偽性のものであり,また現象学や人間学が分裂病を記述し,分裂病の患者の世界企投を解釈するが,それからすべり逃がれて,そのようなものでつかまらない真正の分裂病に独特なものがあるとする。分裂病の独特なものとして以前からいろいろの人により思考障害,現実との関係の変化,統一の喪失,生きた接触の障害などといわれるが,このどの言葉にも「ある独特の分裂性の」という形容詞をつけなければならない。この「ある独特の分裂性の」というものはverbalisierenできない,言葉としていい表わすことができないものであつて,これをRümkeはPraecoxgefühl,Praecox-Erlebnisという。かれによるとこのPraecoxgefühlは身ぶり(Pantomimik),精神運動でもあり,接触でもあり,それに和対した検者に起こるPraecoxgefühlでもあるとしているが,分裂病には分裂性というある独特なものがあるというのでは,同語反復Tautologieであつて,結局は,なにもいい表わしているのではないことになる。「なにかある独特のein ganz bestimmtes」というのとPraecoxgefühlというのとなにも違つたところはない。
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