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特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
著者: 千谷七郎1
所属機関: 1東京女子医大神経科
ページ範囲:P.129 - P.130
文献購入ページに移動 ただいま,越賀,木村,西丸の三先生から,それぞれの哲学的見地を紹介されつつお話がありまして,ご意見の趣旨はよくわかるような気がいたします。しかし,それなら実際に何がPraecoxgefühlなのかという点になりますと,それは趣味判断や意識指向性以前のある体験的水準に属する出来事かと思います。いいかえますと患者のAusdruck(表現)とわれわれの側のEindruck(印象)との聯関に関する出来事においてとらえなければならないことかと思います。このAusdruckとEindruckとの極性聯関(polarer Zusammenhang)は申すまでもなく,生き物相互が相手を生きものと認知することのできる,いわば生き物としては原初的条件であります。生き物という言葉は,誤解の生じるきらいがありますから,性情(Wesen)という語に置き換えるのがいいかもしれません。表現と印象との聯関成立過程についてはL. Klagesの内部運動,Palàgyiの仮性あるいは想度運動(virtuelle Bewegung)の理論に関する準備を必要とするかもしれませんが,ここでは精神分裂病,その他これとまぎれやすい重症躁病,その他の写真をお目にかけて,われわれの印象をためしてみることによつて,私の追加的討論の責をはたさせていただきたいと思います。
症例1 H. U.(第1図)22歳発病,現在30歳の法学士。この表情の特色は眼つき,口もと,小鼻によく出ていると思いますが,一見して感じられることは,この顔つきが模倣できるかどうか,とうていできないであろうと思います。ここにまずPraecoxgefühlの特色の一つがあろうかと思います。つまり表現と印象との極性聯関が成立しない感じといえるでしよう。
症例1 H. U.(第1図)22歳発病,現在30歳の法学士。この表情の特色は眼つき,口もと,小鼻によく出ていると思いますが,一見して感じられることは,この顔つきが模倣できるかどうか,とうていできないであろうと思います。ここにまずPraecoxgefühlの特色の一つがあろうかと思います。つまり表現と印象との極性聯関が成立しない感じといえるでしよう。
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