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文献概要
特集 精神療法における治癒機転 第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
指定討論
著者: 土居健郎1
所属機関: 1聖路加国際病院精神科
ページ範囲:P.277 - P.280
笠原氏のご意見にだいたいは賛成であるが,若干補足的な意見を追加したいと思う。
まず治療の好転の転機のほうが悪化の転機よりも理解しにくいという点であるが,これは一般的にいつて病的現象のほうが健康状態よりも記述しやすいということと関係があるのではなかろうか。だいたい悪化の転機が本当に理解できるならば,好転の転機もおのずから理解できるようになるのだと私は思つている。そこで私は精神療法の初心者によくつぎのような話をする。もし精神療法の結果患者の状態が悪化するようならば,やりかたしだいでよくなるはずだ,と。精神療法の結果なにかがそこに起こるから悪化するのであつて,それが何であるかを究明できるならば,それこそ禍転じて福となすで,それを逆に利用することが可能となるからである。
まず治療の好転の転機のほうが悪化の転機よりも理解しにくいという点であるが,これは一般的にいつて病的現象のほうが健康状態よりも記述しやすいということと関係があるのではなかろうか。だいたい悪化の転機が本当に理解できるならば,好転の転機もおのずから理解できるようになるのだと私は思つている。そこで私は精神療法の初心者によくつぎのような話をする。もし精神療法の結果患者の状態が悪化するようならば,やりかたしだいでよくなるはずだ,と。精神療法の結果なにかがそこに起こるから悪化するのであつて,それが何であるかを究明できるならば,それこそ禍転じて福となすで,それを逆に利用することが可能となるからである。
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