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文献詳細

雑誌文献

精神医学9巻5号

1967年05月発行

特集 創造と表現の病理

第63回日本精神神経学会総会シンポジウム Ⅰ部・創造性の病理

指定討論

著者: 小木貞孝1

所属機関: 1東京医歯大犯罪心理学

ページ範囲:P.326 - P.327

文献概要

 千谷先生の創造性能と表出衝動の区別を機軸とするお話は,創造性の問題について根本的な現象を指摘された卓見であると敬意を表する。とくに,ゲーテにおいて2種類の創作がみられるということ,うつ病相期における内的な抑うつや人生嫌悪を意志により表出している過程などは興味深くうかがつた。このお話をうかがいながら,私の考えていたことは,同じうつ病と思われる夏目漱石の場合には事情はどうであろうか,ということである。
 漱石の一生に3回のうつ病相期がみられること,その作品がうつ病体験の影を色濃く映していることについては,千谷先生も私もべつなところで述べたことがあり,ここで詳細を述べることは省略したい。ただここで問題としたいのは,漱石のめざした創造が,千谷先生のいわれる表出衝動にもとづくものであり,おそらくこの点に,近代から現代にいたる小説を中心とする文学の本質的な面が現われているということである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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