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文献概要

特集 精神療法の技法と理論—とくに人間関係と治癒像をめぐって 第3回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム

精神分析における技法と理論—とくに人間関係と治癒像をめぐつて

著者: 西園昌久1

所属機関: 1九州大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.479 - P.483

 Ⅰ.
 精神分析の技法はたえず進歩がはかられ,修正されこんにちにいたつていることは他の医学的治療となんら異なるところがない。また,古くは,E. Glover3)が報告したように,個々の分析医は個々の患者たちに違つたやり方ではたらきかけ,2人の分析医がまつたく同じ技法をもちいているものでもない。もちろん,そうした技法の修正,発展,さらにバリエーションは,精神分析理論と相互に影響して発展してきているのである。それらの基礎ともなる標準的,ないしは古典的な精神分析を定義するとしたらつぎのようになるであろう。
 すなわち,精神分析とは転移神経症を発達させるのにもつとも効果的な人間関係を治療状況に作ることによつて,情動障害を治療する方法である。転移神経症とは自由連想法の実施によつて,もたらされた分析医に対する患者の小児神経症の再生をさしている。自然,分析医の治療的役割が重視され,治療上に決定的な変化を起こさせるものは分析医が患者に対して理解ある中立性という雰囲気のなかで行なう解釈である。このような経過がおしすすめられて,患者は自己の神経症的葛藤を解決することができるほどの洞察が得られる。こうした洞察が患者によつて得られることが精神分析の治療目標である。このような標準的な技法を基点として分析医たちは,精神分析の実践を行なつているのであるが,時代とともに,その内容がしだいに変遷してきていることはさきにあげたとおりである。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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