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文献詳細

雑誌文献

精神医学9巻7号

1967年07月発行

文献概要

回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・13

開戦とラバウル基地での経験

著者: 内村祐之12

所属機関: 1東京大学 2日本学士院

ページ範囲:P.532 - P.539

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 昭和14年(1939)に,ドイツはヨーロッパ戦争を開始し,昭和16年には日本が太平洋戦争に突入したが,これは両方とも,私にとつて意外中の意外とも言うべき出来事であつた。ドイツの開戦は,私がミュンヘンを去つてから12年後のことであるが,私の留学当時のドイツの情勢とナチスの勢力とを思い合わせると,こんなにも早くドイツが世界を相手の開戦に踏み切るとは,想像も及ばないことであった。
 私が,ミュンヘンに滞在していた1925〜7年のころは,Hitlerが刑務所から出て,ナチス党の再建に取りかかつた時であり,『わが闘争』がようやく広く読まれ出したころであつて,反共気分と保守勢力との強いミュンヘン周辺で相当な共鳴を得つつあつたとはいえ,大きな政治勢力というほどのものではなかつた。私が初めてHitlerについて知つたのは,その視察のために特に日本から派遣されていた参謀将校で,ミュンヘン時代の遊び仲間——と言つても,チロルの山歩きをいっしよにしただけ。念のため——,そして後に日本の仏印進駐の際の軍司令官となつた中村明人中佐の話によつてである。それゆえ,その後,Hitlerが政権を獲得したと聞いても,あの短い期間に,ヨーロッパ中を戦乱にまき込むほどの準備ができるはずはないと思い込んでいたのであつた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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