文献詳細
文献概要
回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・14
戦時体験のあれこれ
著者: 内村祐之12
所属機関: 1東京大学 2日本学士院
ページ範囲:P.609 - P.616
文献購入ページに移動 前回に述べたラバウル出張のちよつと前の18年4月に,同僚の中から最初の戦争犠牲者が出た。それは松沢病院医局の吉松捷五郎君であつた。当時,セレベスの司政長官だつた東龍太郎さんの要請により,同君を派遣したところ,その乗船が,フィリッピン近海で潜水艦に攻撃されて沈没したのである。しかし,同僚の悲報が相次ぐようになつたのは,19年の末から20年の終戦の年にかけてであつた。東大の教室関係からだけでも,実に十指に余る若い戦争犠牲者を出したのである。
若い諸君の召集も引き続き行なわれ,大学の医局は目に見えて寂しくなつた。この間にあつて,最小限度にもせよ,教室の機能が維持されたのは,多少とも健康に問題があつて召集に洩れた諸君と,女医さんたちの力であつたといつてよい。
若い諸君の召集も引き続き行なわれ,大学の医局は目に見えて寂しくなつた。この間にあつて,最小限度にもせよ,教室の機能が維持されたのは,多少とも健康に問題があつて召集に洩れた諸君と,女医さんたちの力であつたといつてよい。
掲載誌情報