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文献詳細

雑誌文献

胃と腸10巻1号

1975年01月発行

今月の主題 胃粘膜―(1)早期胃癌の背景として

主題

早期胃癌の背景としての胃粘膜―内視鏡的立場より

著者: 木津稔1 藤原勝彦1 小林世美1 春日井達造1

所属機関: 1愛知県がんセンター第1内科

ページ範囲:P.61 - P.67

文献概要

 胃癌が胃粘膜のある種の変化(状態)をその発生母地とするなら,早期胃癌の存在する胃粘膜には何か特徴がみられるのではなかろうか.いま一歩話を進めて,胃癌が慢性胃炎,胃潰瘍,ポリープなどをその発生母地とするなら,胃癌,特に早期癌の非癌部胃粘膜は,慢性胃炎,胃潰瘍,ポリープを単独に有し,なおかつ発癌に到らない胃の粘膜とは何か本質的な相違があるのではないか,そしてまた,その変化は内視鏡的なlevelで識別可能なものであろうか,と言う疑問がある.しかし日常,胃X線あるいは内視鏡を武器として早期胃癌の診断をしている臨床医にとって,この疑問はある意味ではナンセンスであり,明確な解答の得られる可能性の少ないもののように思える.

 すなわち,ある病変の鑑別診断をする場合,重要なのは通常その病変自身の持つ性質であり,その背景の胃粘膜像ではないと考えられる.例えば,潰瘍性病変が良性であるか,悪性であるか迷うことはしばしばあるが,病変の周辺粘膜が良・悪性の鑑別診断の根拠となることは,絶無ではないにしろ極めて稀であると考えられる.しかし,前述の疑問は依然として臨床医の頭の中にあり,明確でないにしても,やはり一つの結論を出しておく必要があるように思う.それでは早期癌の非癌部胃粘膜には内視鏡的に何か特徴があるのだろうか,それは早期癌の型によって異なるのか,あるいは組織型によるのか,そしてまた,良性疾患である胃潰瘍,ポリープのそれと異なるのであろうか,また進行癌と早期癌ではどうであろうかなど,これらの点に関して本院の早期癌症例をもとにし非癌部胃粘膜像を主に慢性胃炎の面から論じてみよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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